yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

確かな世界があった70年代ルイジ・ノーノの幸せ『力と光の波のように』

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            Luigi Nono: Como una ola de fuerza y luz (1971/'72) Parti 1; 2 e 3
            http://www.youtube.com/watch?v=9zgSpRrvqz0

現代音楽を、クラウディオ・アバドが振り、マウリッツオ・ポリーニが弾くということ自体が珍しいことであろう。とりわけクラウディオ・アバドの振る現代音楽?というところであるが、たぶん認識不足の私が知らないだけなのだろう。それにしても数少ないことだと思われる。この1971―72年に亘って作曲された『力と光の波のように(like a wave of power and light)』は当代 有数の音楽家参加のもとに、なおかつメジャーのドイツ・グラモフォンから出されている。このことからもルイジ・ノーノの音楽がしめる位置がおおよそ察せられるというものであろうか。先のブログ記事でドイツWERGOレーベルの彼の作品集を取り上げたけれども、それには声とテープのための「ラ・ファブリカ・イルミナータ」(1964)、「アウシュヴィッツでの出来事を想起せよ」(1965)の2作が入っており60年代の作品が中心のものであった。いうまでもなくこの時期の傑作といわれているもので、その情意豊かで、テンションの高いドラマチックな表現性には魅入らせる力が漲っている。ノーノは初期50年代のセリーの作品でも詩的情意を決して放さずに独自な感性で彼らとの違いを見せていた。そのゆえかブーレーズシュトックハウゼンとは距離を置いていたようである。もちろん政治性の違いもあったかもしれない。単に政治的メッセージの表現定位のための、人声の際立ったドラマティックな展開だけでなく旋律の優美さも彼の作品の特徴としている。ちなみにこのアルバムのB面はまさしくそうした美しさと激しさを持った、声、コーラスとテープのための作品「AND THEN HE UNDERSTOOD」が収録されている。未だイデオロギーへの厚き信頼に揺らぐことなく、確信のうちの非常なる政治ロマンの発露としてなしえた、表情豊かな作品でもある。彼は幸せであった。明確な対立が可視にあり革新の希望を信じるに値する政治がまだ存在しえた70年代であった。ルイジ・ノーノには明確な創作モチーフを存在せしめる外界が厳然としてあり、それゆえ作曲家として大作をものし得る幸せでありえた70年代でもあった。




ルイジ・ノーノ Luigi Nono『Como Una Ola De Fuerza Y Luz』(1974)

Tracklist:
A Como Una Ola De Fuerza Y Luz 29:54
Conductor - Claudio Abbado
Orchestra - Symphonie-Orchester Des Bayerischen Rundfunks
Piano - Maurizio Pollini
Soprano Vocals - Slavka Taskova
B Y Entonces Comprendió 31:54
Chorus - Coro Da Camera Della RAI
Conductor [Chorus] - Nino Antonellini
Soprano Vocals - Gabriela Ravazzi , Liliana Poli , Mary Lindsay
Voice - Kadigia Bove* , Elena Vicini , Miriam Acevedo

Credits:
Artwork By - Klaus Pölter
Engineer - Klaus Hiemann
Engineer [Tape] - Marino Zuccheri
Photography - Siegfried Lauterwasser
Producer - Rainer Brock
Producer [Tape], Composed By - Luigi Nono