yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

いまや「大御所」の実験的作曲家が個々のこだわりを聴かせる『THE SONIC ARTS UNION』

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                Robert Ashley "Purposeful Lady Slow Afternoon" 1972
                http://www.youtube.com/watch?v=PnH_jjAJuDw&feature=related

アルヴィン・ルーシェALVIN LUCIER(1931)、ロバート・アシュレーROBERT ASHLEY(1930)、ダヴィッド・バーマンDAVID BEHRMAN(1937)、ゴードン・ムンマGORDON MUMMA(1935)この4人によって1966年に結成された<THE SONIC ARTS UNION>は、メンバーの作品をパフォーマンスするために組織されたようであるが、ジョン・ケージら先達の楽音を超出する実験的な先駆的試みを、より以上に多様なかたちで実践した若き推進者たちの代表格の集まりとでも言えるのだろうか。アール・ブラウンがこのMAINSTREAMレーベルの現代音楽シリーズ制作にコミットしているせいで彼らケージに近い若手がピックアップされているだけなのかもしれないが、そのあたりは確証するほどには他の作曲家のものを聴いてるわけではないのでなんとも言えない。ただダヴィッド・バーマンにしろゴードン・ムンマにしろジョン・ケージと同じくマースカニングハムダンスカンパニーThe Merce Cunningham Dance Co.の音楽担当として活動を共にしていたことはコンセプトに共通するものがあってのことだろう。またロバート・アシュレーも実験的パフォーマンスグループのONCEに深くかかわっていた。ともかくこの『THE SONIC ARTS UNION』に収録されている四人のパフォーマンスを聴いての印象は、個々人の感性の<こだわり>の徹底性ということだろうか。だからこそというべきなのだろうか、それがあればこそ斯く生きながらえ一線で存在し続け得たのであろう。A面1曲目はアルヴィン・ルーシェの「VESPERS」(1968)。かれは、暗い場所に生息する生き物に興味とリスペクトをもっているそうで、とりわけ超音波を発するこうもり、イルカなどの生物に特に関心があるということである。ここではソナーをもって各自暗闇のなかでパフォーマンスしてのものというが、4人のパルス音のさまざまな動きが感じられるというもので、パフォーマーの動きが見えない中では面白さが伝わってこないようだ。脳波のライブパフォーマンスとか、壁、床をフィルターとしてサウンドパフォーマンスするとかの作品があるということから音への感心のありどころが伝わってこよう。不可視な、非常にトリビアルな変化へのこだわり。2曲目「PURPOSEFUL LADY SLOW AFTERNOON」のロバート・アシュレーのものも劇場パフォーマンス用ということで視覚的要素のない音だけでは意図するところが伝わってこないのかもしれない。アンプリファイドされた声とテープの作品、声へのこだわりのひじょうに強い作曲家である。先にブログで採り上げた『AUTOMATIC WRITING』のごくごく一部を聴く事で大体を察して頂きたい。クリックするだけでMedia playerにて聴ける。
http://www.lovely.com/titles/cd1002.html 
http://www.lovely.com/titles/cd1001.html
B面1曲目はダヴィッド・バーマンの「RUNTHROUGH」。モヂュレーターとジェネレーターを使ってのサウンドパフォーマンス。それらの器械を単にダイヤリング、スイッチングするだけでの変化音のインプロヴィゼーション作品。単純なのに変化の様相が面白い。単純な電気的操作での変化のパフォーマンスのこだわり。サウンドの趣は少し違うがこの作家の世界を覗くことが出来る。
http://www.lovely.com/titles/cd1041.html
2曲目はゴードン・ムンマの「HORNPIPE」(1967)。タイトルとおりで、フレンチホルンとその奏者が肩からぶら下げたサイバーソニックコンソールを介在させての独奏エレクトリックライブパフォーマンス。サウンド的には輪郭がはっきりしているせいか、これが最も面白く聴けた。ホルンの音がさまざまに電子変容していくさまが了解の範囲にあるせいであろう。彼はアンソニーブラックストン(sx)やルロイジェンキンス(vn)らのジャズ畑とのコラボレーションがあるように、音との交歓への傾向性があるのかもしれない。音の変化へのシビアーなほどの感度がある。ホルンひとつでこれだけ音の変化を楽しめ、創り出せる。電子パーツを介在しての新しい音色世界への試み、おもしろいものだ。