yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

電子音響世界に感性が開いているクロアチアのフランス作曲家イヴォ・マレク

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1925年クロアチアザグレブ生まれのイヴォ・マレクIVO MALEC。生年からいえばルチアーノ・ベリオとおない年ということになる。別に片やメジャーで、こちらマイナーというわけではないだろうけれど。その名が一般的に知られていないことは否めない事実であろう。これだけの長きに亘る作曲家としての活動歴と、しかも数度の自作品に対する輝かしいディスク大賞が与えられているにもかかわらず、我が邦盤にその名を冠した作品集なるものを知らない。いや、ひょっとしておぼろげな記憶でしかないけれど一枚カップリングで出されていたかもしれない。例の如くCD時代になってから以降はまったく事情を知らないのでいい加減なことを言ってはいけないかもしれないが。またまたご多分にもれず、フランスI.N.A G.R.Mの現代音楽シリーズの一枚でなおかつ輸入盤とあってオール・フランス語で文字が躍っている。2枚組みのこのアルバムに収録されている曲解説があるにはあるが、辞書と首っ引きの時間的余裕もないと言い訳しつつ、なんのこっちゃという呟きがでるだけのものである。この作曲家情報をネットで検索してもほとんどがフランス語のページのみである。ましてや日本語で誰かが取り上げていないか覗いてみたが、皆無に等しい。というわけで、こうしたフランスと日本でのこの作曲家の一般化の度合いの落差はどこから来ているのだろうという視点からこのアルバムを聴くことになるのはごく当然だろう。1枚目の「SIGMA」(1963)などのオーケストラ作品に顕著に聴けるのは、濃密な音色・サウンドへの志向性であろうか。ここには明らかに、音色に対する感性が電子音響からの影響が明瞭に感じとられはする。もちろん彼も電子音楽の長年の探求研鑽を経ているのであってみれば当然であろう。ところで次の「LUMINA」(1968)は弦楽とマグネティックテープのためのダイナミックな作品であり、テープによる電子音響とアコースティックな弦楽とが作り出す世界は面白く、とりわけ電子音響に巧みさとセンシティヴな美意識を感じさせて興味深いものがある。イヴォ・マレクは本来的に電子音響世界に感性が開いているのかもしれない。純然たるテープ音響作品の「CARILLON CHORAL」(1981)などはパイプオルガンのくりだす音を巧みなテープ電子処理に拠って宗教性をおびたコンクレートミュージックとなっている。ところが先の「SIGMA」、そして「DODECAMERON」(1971)、「VOX,VOCIS,f.」(1979)などのアコースティックな編成の作品を聴くと、確かにどちらかといえば、私たちの線の細いというか繊細さを好む、ひそやかななかにも奥深さ、余韻を感じとりたいわれわれの感性にはいささかなじみ難いものがあるように感ぜられる。音のマッスがモロ(直接)すぎるのだろうか。精神性のありどころが違うのかもしれない。それゆえか表層をはなはだしく滑る音響、深み奥行きの不足、了解地平のズレの印象を私は持った。こういったことが先の一般化の不足として結果しているのかもしれない。もっとも私のそれを普遍妥当だとは勿論思ってはいないけれども。しかし純然たる電子音響テープ作品「RECITATIVO」(1980)に聴ける、やかに流れゆく繊細さもった作品はひじょうに魅力あるものである。この好い感性がどうも私にはオーケストラ作品には反映生かしきれていないように思われるのだが。その「RECITATIVO」のつぎにくるSIDE4の最終収録曲「VOCATIF」(1968)とタイトルされたオーケストラ作品が流れ始めると対比的にその感強くするのはたぶん私だけではないと思われる。




Ivo Malec 『Sigma』(1983)

Tracklist:
A1 Sigma 10:40
Conductor - Jean-Claude Pennetier
Orchestra - French National Orchestra*
A2 Dodecameron 18:42
Chorus - Solistes Des Choeurs De l'ORTF
Conductor - Marcel Couraud
B1 Lumina 14:02
Conductor - Ivo Malec
Performer - Ensemble 2e2m
B2 Carillon Choral 10:45
C1 Vox / Vocis / F 26:26
Conductor - Ivo Malec
Mezzo-soprano Vocals - Nicole Oxombre
Performer - Ensemble 2e2m
Soprano Vocals - Marie-Thérèse Foix , Nicole Robin
D1 Recitativo 12:50
D2 Vocatif 16:44
Conductor - Diego Masson
Performer - Ensemble Musique Vivante