yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

品格を聴くフリージャズ、ジョン・スティーヴンスの 『So, What Do You Think?』

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まったくもってこのような品格とインテリジェンスをもったフリージャズもめったに聴けるものではないと言いたくなるほどの逸品・名盤である。とりわけジョン・スティーヴンスJohn Stevensの惚れ惚れするほどの抑制された渋いドラムスがそのコレクティヴインプロヴィゼーションの品位を保つ上で大きく寄与していると私には思われる。極め付きという言葉があるがまさにぴったりである。伝統的な室内楽の持つアンサンブルの落ち着きとゆとりをも感じさせるみごとなフリージャズといえよう。めったにほかでは聴けない落ち着きと渋さにきわだつインプロヴィゼーションジャズといえるのではないだろうか。そのグループ名<Spontaneous Music Ensemble>のとおり、個々のコンビネーションに見る滑らかな内省的とでも形容できるインタープレイにダイレクトな感情発露の激情は無い。先のようにまるで室内楽アンサンブルを楽しんでる風情でもある。ここにはメロディらしきもの、明瞭なビートもない。だが品位のある音に満ちているすばらしい照応(correspondence)の世界がある。デレク・ベイリーDerek Baileyの演奏空間引き締めるギターとデイヴ・ホランドDave Hollandのアルコベースの絡みに落ち着きの世界を聴き、とりわけケニー・ホイーラーKenny Wheelerのトランペット、フリューゲルホーンが一層の渋みをもたらす。トレヴァー・ワッツTrever Wattsのひかえめなソプラノサックスも逸脱しない。こういう落ち着きと渋さのフリー(スポンティニアス)ジャズもいいよと薦めたくなるジャズである。品格が聴けるジャズである。ジョン・スティーヴンス(ds)ひきいての1971年イギリス・ロンドンでのスタジオ収録『So, What Do You Think?』。実に35年も前の演奏であることにいささかの古臭さも無く異和も感じさせないみごとさである。よき普遍的感性に裏付けられてのコレクティヴインプロヴィゼーションということなのだろう。