yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

アーティフィッシャルな抒情漂わせる JACQUES LEJEUNE のミュージックコンクレート

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1940年生まれのフランスの作曲家でコンセルバトワールにてピエール・シェフェール、フランソワ・バイルのもとで研鑽、69年より電子音楽等の研究機関である<Groupe de Recherches Musicales de Paris>いわゆるGRMの職に就いているということだけしか分からない。
≪1976年に生まれたパリのポンピドゥー・センターの併設組織IRCAM(イルカム)は、現在でもなおヨーロッパのコンピュータ音楽の最先端の研究施設である。初代所長はピエール・ブーレーズ。………パリにはもうひとつラジオ・フランス内にINAという組織が持つGRMというコンピュータ音楽研究施設があり、これをINA-GRM(イナグラム)と呼んでいる。こちらはジャン・クロード・リセ、リュック・フェラーリなどの作曲家を生み出した。INA-GRMは現在ではIRCAMと技術を競い合っている。≫(WIKIPEDIA)。
この盤も例の如く、作曲制作年度すらもコメントされていない程度のものであり、かつフランス語のみ。ネットショップでの情報からではこの輸入盤のフランスでの制作が1974年ということだそうで、この作曲家にとっても初期のものなのだろう。90年代以降多くの作品がリストアップされているらしいことからも、エレクトロアコースティックミュージックの領域では重要なポジションにいることは確かなことなのだろう。何せ当方の認識不足と、4半世紀まともに音盤と付き合うことなく今日に至っていることもあって、30年近くの情報不足ではその程度のことしか分からない。
このジャック・ルジュンヌJACQUES LEJEUNEの『PARAGES』(INA‐GRM)なるミュージックコンクレートのアルバムは、野外で採録された具体音が基調になっているとはいえ音のしなやかな加工処理の人工性には耳をそばだてさすものがある。アーティフィッシャルなマチエールの展開のなかにも抒情漂わせる感性世界は<知>とのよきバランスのうえにあるのだろう。
A面1曲目の『Etude De Matiere, D’espace Et De Rythme』にしろ、2曲目のイカロス説話≪クレタ島のミノス王の不興を買い、父子は塔に幽閉されてしまう。彼らは蝋(ろう)で鳥の羽根を固めて翼をつくり、空を飛んで脱出したが、調子に乗ったイカロスは高く飛びすぎて、太陽の熱で蝋を溶かされ墜落死した。≫(WIKIPEDIA)を題材にしての生々しい声のエロチシズムをたくみに使った『Le Cycle D’icare』は現実の具体音の電子変調がイメージの細切れで終わるのでなく、滑らかに継起する中での面白さで飽きさせない。
B面の『Traces Et Reminiscences』などを聴くと、より一層、この作曲家の<音楽>という枠組みを前提からはずすことの無い志向性・感性に裏付けられたヒューマニティをすら漂わせた美意識での電子変調処理で、一種哀切とともに心地よささえ感じさせるいいミュージックコンクレート作品となっている。




Jacques Lejeune - Petite Suite (1970)