yuki-midorinomoriの日記

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賞賛、歓呼倍加する1975年の山下洋輔トリオ再ヨーロッパツアードキュメント『CHIASMA』(1976)

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山下洋輔トリオ   キアズマ (CHIASMA):1975.6.6

            

ヨーロッパでの成功勝ち得ての翌年、1975年ドイツでのライブ録音である。衝撃的なヨーロッパデビューの成功は、当時でも大きな話題であった。一曲終わるごとの嵐のごとき歓呼の凄さが前年にもまして倍加しているのを聴くことができる。怒涛というにふさわしいパフォーマンスであり、賛辞である。まさに絶頂であった。このアルバム『CHIASMA』(1976)のB面3曲目に収録されている「HACHI」こそは、大阪梅田、関西テレビの近くにあったジャズ喫茶インタープレイ・ハチに捧げられた曲であり、直近で若き山下トリオの汗迸らせ音圧凄まじく疾走するプロトジャズをもろに浴びた思い出深いスポットだった。地下一階にある、ほんに小さなジャズ喫茶であった。阪急東通商店街にあったジャズ、ロック専門のレコード店「LPコーナー」での催し案内の掲示にさそわれ足運んだものであった。仕事もそこそこに友と連れ立ち、日々の鬱屈の解消とばかり山下洋輔トリオの激奏熱闘に身を沈めたものであった。打ち叩き、体躍らせる山下洋輔のピアノは言うに及ばず、今でも間じかで、激しさに顔ゆがめるドラム森山威男のスティックが手元離れ飛んでゆくさまは眼に焼きついている。A面1曲目の森山威男のドラムとのデュオもセンシティブな絡み素晴らしく、セシルテーラーは間違っていた、彼と組むべきであったとも言いたくなるほどである。両者素晴らしいパフォーマンスである。一転2曲目のピアノソロ、輝く自信に満ちたテクニシャンぶり、聴衆の心つかんでお見事。足踏み手拍子、大合唱大きな歓呼のうちに始まる3曲目の「キアズマ」。余技暇つぶしともいえぬそのミジンコ研究で学者を唸らせもする広島大水産出の坂田明のフリーキー極まるサックス加わり、トリオの爆走はより激しさ増し、観衆の歓呼に雪崩れ込むさまには胸がすく思いである。山下洋輔のパワーを引き出すには森山威男のドラムが必要であった、と斯く思わせるに十分なB面1曲目の「HORSE TRIP」。ここで素晴らしいドラムソロが聴ける。そして先にあげたくだんの「HACHI」である。先日のサッカーでの我が代表とドイツとのテストマッチのごとく、溜飲を下げる思いである。まことに痛快の極み。私には思い入れがありすぎて、山下洋輔はすべていいのである。


Hachi