yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

私性のない没我浮遊感でビミョーな、SMEジョン・スティーヴンスの『BIOSYSTEM』(1977)

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1960年代後半よりイギリス・フリージャズシーンを牽引した名ドラマー、ジョン・スティーヴンスJohn Stevens(1940-1994)。Spntaneous Music Ensemble率いて多くの作品をフリーインプロヴィゼーションジャズの記録としてのこしている。先の私のブログでもとりあげたいずれも名品傑作アルバム『Karyobin』(1968)。『So, What Do You Think?』(1971)。これらの先鋭なこころみにはデレク・ベイリーエヴァン・パーカーらの顔が見える。60年代後半より、大陸側ドイツ、オランダなどとはインテリジェンスの面にていささかの違いを見せて興味深かったイギリス・フリージャズを果敢に実践。それらは、のちINCUSレーベルで聴くことが出来る。もっとも当のジョン・スティーヴンスは、これ以外のマイナーレーベルにて多くの記録をのこしているようだ。ノンイディオム・インプロヴィゼーション・ジャズを提唱し苛烈に実践、ランダムネスに裸形の冷厳な音連れをギターに弾いたデレク・ベイリー。自らが空虚なうつわと化すまで凄絶に、内へと反転吹きつづけ、存在の無への解消のはてに、何かしらの気配を呼び寄せる風情のエヴァンパーカーのサックス。抑制された品格あるコレクティヴ・パフォーマンスに優れたジョン・スティーヴンスのドラム。その他の錚々たるミュージシャンも含めおしなべて品格というものが感じられるインプロヴィゼーション・パフォーマンスで堪能させてくれたものであった。ところで今日ここに取りあげたIncus24のアルバム『BIOSYSTEM』(1977)。今まで、まことに気になりつつもいつも取りあげるに躊躇していた不可思議な印象をおぼえるジョン・スティーヴンスのSpntaneous Music Ensembleによるアルバムである。編成からしてNigel Coombes(violin) Roger Smith(guitar) Colin Wood(cello)のクァルテット。3つの弦、おまけにスティーヴンスはドラムだけではなく、コルネットも吹いている。自我=私性の主張の放棄とも言えるのか、浮遊感に満ちたなんとも揺れて定まらぬ居心地の悪さ。おのおのがてんで強く主張するでもなくひそやかに音紡いでいるこの一見まとまり、しまりのなさ。当然のごとくの了解世界の成り立たないビミョーな音界の現前。ところがジョンスティーブンスの没我内閉的とでもいえる抑制された巧みなドラムがあずかってもいるのか、奇妙におのおのの勝手気ままとも思える音たちが違和なく互いに押しつけがましくなく世界をビミョーに定位するから奇妙である。現代音楽にはついぞお目にかかれぬビミョーな、ゆるくゆらめき、お互いが没我に漂いつづける不思議のコレクティブ・インプロヴィゼーション・ジャズ(ミュージック)といえるのだろうか。



ジョン・スティーヴンス『Karyobin』
http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/22213485.html。

ジョン・スティーヴンス『So, What Do You Think?』
http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/30738036.html。