yuki-midorinomoriの日記

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映画「プラトーン」に流れた悲しくも美しい「弦楽のためのアダージョ」で有名なアメリカの作曲家サミュエル・バーバーの『ヴァイオリン協奏曲』(1939)と『第一交響曲』(1942)

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Violin Concerto Op.14 Mov.1 - Allegro - Samuel Barber

           

きょうは、あのベトナム戦争を扱って秀作とした映画「プラトーン」(1986年制作)に使用された悲しくも美しい「弦楽のためのアダージョ」で有名なアメリカの作曲家サミュエル・バーバー・Samuel Barber(1910-1981)。この曲は9・11の犠牲者哀悼の儀式の場でも使われたそうである。本人はそうした鎮魂、レクイエムといったことのために使われることは本意ではなかったようである。
学業最優等で修了≪1935年に、ローマのアメリカ学士院より奨学金を得て、翌年よりイタリア留学を果たす。同地で《弦楽四重奏曲 ロ短調》を作曲、この第2楽章が後に弦楽合奏用に編曲され、《弦楽のためのアダージョ》として広く親しまれるに至った。≫(WIKIPEDIA)こうした経緯をみると、このアダージョに誰しもが印象するあの弦楽の哀切満ちた美しさは、サミュエル・バーバーフォークロア的感性を根っこにしたロマンティシズムが、留学先イタリアの音楽例えばプッチーニに代表される美しさ際立つ旋律性の影響もあってだろうか、その曲調に強くあらわれることになった要因だったのではと推測される。
今回の取りあげるアルバムにはその曲は入っておらず『ヴァイオリン協奏曲・Concerto For Violin And Orchestra Op14』(1939)と『第一交響曲・First Symphony In One Movement Op9』(1936/42)の二曲である。
マイナーなアメリカCRIレーベルであることを見ても分かるようにバーバーの存在が、あまり一般化してはいなかったことがこれでよく分かるというものである。したがって演奏のよしあしは言わない。とにかくどのような曲か聴いてみたかったのである。NETで覗くと、いまでは曲目は違うけれどバーンスタイン指揮のものがあったところを見ると、それなりに聴かれているのだろうか。
A面は『ヴァイオリン協奏曲op.14』。美しい旋律に先ず聴き惚れることだろう。まさに≪バーバー作品は豊かで華麗な旋律が特徴的で、新ロマン主義音楽の作曲家に分類されている≫(WIKIPEDIA)という一般的評価が肯けるというものである。たぶん先にも言ったようにアメリカがもつ保守的土壌の良質なフォークロア的感性が、その情感溢れ哀しさ湛えた美しさのロマンティシズムを、より心に響く真正としているのだろう。2楽章の冒頭の情緒纏綿とした旋律にはプッチーニに聴かれる泣かせる美しいい旋律を聴くことだろう。荒川静香の感動する金メダル氷上の舞に強く印象付けたプッチーニトゥーランドットのアリア「誰も眠ってはならぬ」の旋律の美しさが思い出される。アメリカの現代音楽作曲家の作品であることに驚くことだろう。
B面『第一交響曲op9』は雄大さ、伸びやかさにロマンを響かす曲調となっており、古典的な作品であるといえようか。これ以上豊麗に鳴らないのか、鳴らせないのかよく分からないけれど、ヴァイオリン協奏曲を聴いたあとではいささかの不満が残る。作品それ自体のオーケストレーションがそうなのか、パフォーマンスのほうなのかよく分からないけれど、本来もっと広がりと深みをもっての豊麗な仕上がりが期待できるようには思えるのだけれど。あれだけ弦を鳴らして泣かせるのだから。
ところでちなみに、このバーバーは≪1日の仕事を始める前に、バッハの『平均律クラヴィーア曲集』などを弾く習慣≫があったそうである。武満徹もまたバッハ『マタイ受難曲』の一節だった。ところで、まったく話は変わるけれど、この稿をまとめる為にNETを覗いていて≪実際にプッチーニシェーンベルクの『月に憑かれたピエロ』を熱心に研究し、実際の演奏にも触れ、これを傑作と呼んでいた。≫(WIKIPEDIA) とあった。そのプッチーニドビュッシーは嫌っていたそうである。面白いものである。


Samuel Barber - Adagio for Strings, op.11