yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

無常と寂寥の良寛を読む

イメージ 1

今日は文章まとまらず、さりとて読後感想ともいけず、さてどうしたものかと思案しばし。
無常感と寂寥の心に、なぜか日本人にとっては心魅かれる良寛の歌を引用、鑑賞することとしよう。人里はなれ、森閑とした庵にて耳澄まし全身音ともなり音の中へと入ってしまう、いわゆる禅で云う「心、境、倶(とも)に忘れず」にある良寛の歌である。


       冬夜長し 冬夜長し

       冬夜悠々 何れの時か明けん

       燈に焔なく 爐(ろ)に炭なし

       只聞く 沈上 夜雨の声



          寒爐(ろ)深く 炭を撥(か)き

          孤灯 さらに明らかならず

          寂寞(せきばく)として半夜を過ごし

          ただ遠渓の声を聞く



       蕭條たる三間の屋       

       終日 人の観るなし

       独り座す 閑窓の下       

       唯聞く落葉の頻りなるを

              (蕭條・しょうじょう=ひっそりともの寂しいさま)
              (本来は門構えに月です)



          秋夜 夜まさに長し

          軽寒 わがしとねを侵す

          已(すで)に耳順の歳に近し

          誰か憐れむ幽独の身

          雨歇(や)んで滴り 漸(ようや)く細く

          虫啼いて 声愈(いよい)よ頻りなり

          覚めて言(ここ)に寝ぬる能(あた)はず

          枕を側(そばだ)てて清震(せいしん)に到る


なんとも侘しく寂しいものです。音自体となり、音を聞く良寛


       無常 まことに迅速

       刹那刹那に移る

       紅顔 長く保ちがたく

       玄髪 変じて糸となる

       弓を張る 背梁(せきりょう)の骨

       波を畳ぬ 醜面の皮

       耳蝉(じぜん) 竟夜鳴り

       眼華(がんか) 終日飛ぶ

       起居 長く嘆息し

       依稀(いき)として杖に倚(よ)って之(ゆ)く

       常に憶(おも)ふ少壮の楽しみ

       業(すで)に添う今日の罹(うれ)ひ

       痛ましきかな 老を惆(いた)むの客

       彼の霜下(そうか)の枝のごとし

       三界に生を受くる者

       誰人か斯(ここ)に到らざらん

       念念暫くも止(とど)まるなし

       少壮能(よ)く幾時ぞ

       四大(したい) 日日に衰へ

       心身 夜夜に疲る

       一朝病に就いて臥せば

       枕衾(ちんきん)長く離るるなし

       平生 嘍囉(ろうら)を打たせども

       此に至って何の所為ぞ

       一息 わずかに截断すれば

       六根ともに依るところなし

       親戚は面に当って嘆き

       妻子は背を撫でて悲しむ

       渠(かれ)を喚(よ)べども渠(かれ)応へず

       渠(かれ)を哭(こく)すれども渠(かれ)知らず

       冥々たる黄泉(こうせん)の路(みち)

       茫茫として且つ独り之(ゆ)く

                 松岡正剛『外は、良寛』(芸術新聞社・1993)より 


わが行く末、なんとも儚く侘しいものです・・・・・・