yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

世界で最初といわれるコンピュータで計算処理させて作曲された、古典的な整除された美しをも感じさせる『イリアック組曲』(1957)と『Computer Cantata』(1963)

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Lejaren Hiller: Computer Cantata (1963)

              

おおよそコンピュータで音楽上のエレメントを計算処理させて作曲されたものと思えぬ古典的な整除された美しいともいえる弦楽四重奏作品である。この今回取り上げる『イリアック組曲Illiac Suite for String Quartet』(1957)はコンピュータを作曲のための計算処理に使って作曲された世界で最初の作品といわれている。
レジャレン・ヒラー (Lejaren Hiller) (1924-1994) とレオナルド・アイザックソン (Leonard Isaacson) による、イリノイ大学のコンピュータILLIAC Iを使ってのもの。そもそもこのレジャレン・ヒラーは化学者でランダム・ウォーク理論(今で言う複雑系・カオス理論?)の研究のためにイリノイ大学のコンピュータILLIAC Iを使っていたそうである。
イメージ 2とはいうものの片一方でミルトン・バビットMilton Babbitt やロジャー・セッションRoger Sessionsという東部の保守的アカデミズムの大御所に音楽も本格的に学んでいる。それがこうしたコンピュータ計算処理の音楽への導入の試みのきっかけであったそうである。
≪ILLIAC I(イリアック・ワン、Illinois Automatic Computer、イリノイ自動計算機)は、イリノイ大学で1952年に開発された初期のコンピュータであり、教育研究機関が自前で開発して所有した最初のコンピュータで≫ある。
今のような高性能なパーソナルコンピュータ出現のはるか以前のものであり、劇的進歩を遂げている技術分野ゆえ、その性能も察せられるとは言うものの≪ILLIAC I はプリンストン高等研究所(IAS)の数学者ジョン・フォン・ノイマンが編集した Von Neumann Architecture に基づいている。・・・・約 2800本の真空管で構成され、大きさは長さ3m、幅0.6m、高さ2.6m、重さは4.5tである。
ILLIAC Iは当時としては非常に高性能で、1956年のベル研究所に存在した全コンピュータの能力を合わせても、ILLIAC I 1台に敵わなかった。・・・ILLIAC の使用した真空管の寿命は約 1年であったため、予防的保守としてマシンは毎日シャットダウンされた。そのときに古い真空管を壊れる前に交換していたのである。マシンは ILLIAC II が使用可能になった 1962年にリタイアした。≫(以上WIKIPEDIA
さて、ところでこの「イリアック組曲」は先にもいったように、コンピュータによる自動演奏ではなく、演奏のほうは従来どうりの人間による弦楽四重奏である。それだけに違和感のない曲としてできあがっているのだろう。というより、かっちりとしたよくできた弦楽四重奏作品である。ということはこうしたコンピュータの作曲過程への介在をどう見るのだろうか。あまりにも当たり前のよくできた作品だけにこの問いだけが残る。
もう一曲のほうの『Computer Cantata』(1963)はレジャレン・ヒラーとロバート・ベイカーRobert Baker二人によるもので、こちらは音のほうもコンピュータ処理されたもの(シングルトーンのそれ)と人声、室内楽とのコンバインされた曲であ。こちらのほうはいささかエモーショナルな新奇性に富むセリー形式(無調)の現代音楽作品ともなっている。ときあたかも同じくしてヤニス・クセナキスもこうしたコンピュータを計算処理に使って作曲しているが、言うまでもなく趣きは全然と言っていいほど違う。音形成への意志、<テクネー>への哲学の相違なのだろうか。



≪ランダム・ウォーク理論
1828年 ロバート・ブラウンが花粉を水中に入れ観察したところ、花粉はでたらめな動きをすることを確認。1905年アルバート・アインシュタインブラウン運動の研究を発表。花粉から出た粉子は、花粉をでたらめに打つ。つまり、花粉はでたらめな動きをする。このでたらめな動きを数学者は、ランダム・ウォークと呼んでいる。たとえば、泥酔しきったヨッパライがどんな動きをするのか誰にも見当つかない。ヨッパライの今まで歩いてきた過程を分析して、今後の動きを予想をすることはバカげている。つまり、今までの過程と今後の動きはまったく独立(無関係)するという理論。≫(ネット記事より)