yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

人間音声のテクノ変換、解体ぶりに異相、異形な音響世界を提示する『EXTENDED VOICES』

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いまやともども大御所と称されているらしいデヴィッド・バーマンDavid Behrmanのプロデュースで、アルビン・ルーシェAlvin Lucierがディレクションしてなったアルバムがこの『EXTENDED VOICES』なるアルバムである。もうタイトルどうりのコンセプトで、人間の音声の電子変調変換された音で構成された作品である。ソロおよびコーラスのさまざまな電子機器介在しての異形の音響世界はひじょうに魅力的なものとなっている。とりわけシンセサイザーヴォコーダーによる音声合成などの試みは、聴いていると斯くまでと思わせるほどのテクノ変換、解体ぶりが異様な未来世界の現実への提示のようで、近未来SF的アーティフッシャルの異相世界でさえある。これらなど視覚映像伴うシアターピースとして聴視覚体験すれば相当なインパクトをもたらすと想像されるほど興味深い試みに溢れている。ソニック・アートユニオンでそのアヴァンギャルド振りを世に知らしめたアメリカの若き精鋭がこのアルバム制作に関与しているのも、今からしてみると興味のあるアルバムとなっているのではないだろうか。とことん生身の人間の声というそれ自体あらゆる意味性をもつ表情豊かな音を電子変換という科学技術で異相開示を試み、その意味性の地平を聴覚の新奇性、サウンドの異形をもって揺さぶるこれらの試みはまことに面白い作品群の揃うアルバムとなっている。たしかにジョン・ケージの、<革命以前には、あらゆることは試みに値する>という実験的精神を、若き後世代のソニック・アートユニオンのメンバーたちがその革新性を果敢に実践したことの特筆すべき成果のアルバムとして、是非の一聴を薦めたい。ジョン・ケージの実験的革新のコンセプトを後継的実践して現代音楽、とりわけエレクトロニック・パフォーマンスで大きな革新を斯界にもたらしたソニック・アートユニオンにいささかの興味をもたれている方には聴き逃すことの出来ないアルバムと私には思える。それほどのインパクトのあるアルバムである。女性電子音楽作曲家のPauline oliveros『SOUND PATTERNS』から始まり、Alvin Lucier『NORTH AMERICAN TIME CAPSULE 1967 (for voices and Sylvania electronic systems vocoder)』、John Cage『SOLOS FOR VOICE2 (electronic realization by Gordon mumma and david tudor)』、Robert Ashley『SHE WAS A VISITOR』、Toshi Ichiyanagi『EXTENDED VOICES (for voices with moog synthesizer and buchla associates electronic modular system)』、Morton Feldman『CHORUS AND INSTRUMENTS(Ⅱ)(tuba chimes)』、Morton Feldman『CHRISTIAN WOLEF IN CAMBRIDGE』と興味ある面々の作品が収録されている。














vocoder
(人間の声の音色に、主にキーボードなどの楽器音程をミックスして出力する機器。周波数を変化させて、音程は楽器、音色は人間の声というサウンドをつくる。)
http://homepage1.nifty.com/GuitarFx/vocoder.htm