yuki-midorinomoriの日記

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ヘルベルト・アイメル(1897-1972)のビキニ環礁での水爆実験で被曝死の犠牲となった第五福竜丸乗組員『久保山愛吉の墓碑銘』(1960‐62)

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Herbert Eimert: Epitaph für Aikichi Kuboyama (1957/'60-1962) Seconda parte

           

昨日、NHKテレビで、核廃絶へ向けての活動に深くかかわった日本人初のノーベル賞受賞者湯川秀樹の核物理学者としての責任と、平和への思いをえがいた番組が流されていた。たまたま目に入っただけであるが、なんとなく最後まで見てしまった。取り返しのつかぬ核拡散に至った今となってみれば核廃絶それ自体がいささか非現実な問題提起のように思えるのは、核抑止論で斯くまで事態が悲劇的なまでになすすべも無く進んでしまった事の裏返しなのだろう。どうしようもないと冷ややかにやり過ごしたところで事態はなんら変わらない。核抑止論による核拡散のパラダイムを抜けきれない人間の無力をなんとしよう。まことに人間にとって平和とは、戦争という常態のつかの間の休息にしか過ぎないのだろうか。歴史の英傑たちの知恵をもってしてのこんにちこの現実であれば、はやこれまでと匙を投げたくもなろうというものである。しかし<核>の現実は、人類の危機として絶対的なまでの重石となってこの先もあり続ける事だろう。人は自らの個としての生き死にを切実に憂えても、類としての生き死には考え及ばない。つまりは類として全的に生き、かつ死ねないからだ。それは抽象でしかなく、具体を持たない。さて、かの有名な20世紀最大の科学事件のひとつ、1907年アルバート・アインシュタインが発見した公式には次なる内実がある。エネルギー(E) = 質量(m)×光速度(c)の2乗というこの公式で、質量1キログラムをエネルギー変換すると次のようになる。

· 89,875,517,873,681,764 J(ジュール)と等価
· 24,965,421,632 kWh(キロワット時)と等価
· 21.48076431 Mt(メガトン)のTNTの熱量と等価

核分裂による膨大なエネルギーの変換抽出ということだ。この発見の画期、価値はなんらかわることは無い。ましてやこの発見が人類への危機的事態をもたらす核爆弾を帰結したにせよ、このことのための発見でもなかった。与り知らぬことであった。しかし、ここに人類の悲劇、核開発、はてしのない核拡散への始まりがあった。物質の究極、真理をもとめた(核)物理学者達の思いは、人類破滅の道へと暗転した。トリガーとなった事は重き呵責となって、科学者の核廃絶への動きは当然の行動、良心であったのかもしれない。現在のDNAの人為的操作も、そうした懸念なしとしない。ところで、被爆・敗戦国のノーベル物理学者、湯川秀樹が衝撃を受けたのは、アメリカのビキニ環礁での水爆実験で、操業中被ばくしたマグロ漁船・第五福竜丸の乗組員、久保山愛吉氏の被曝死(水爆による世界で初めての犠牲者であった)をともなう事件であった。日本人にとっても核被爆・敗戦の傷跡未だ残る1953年の事件であり、大きな出来事であった。この第五福竜丸事件で亡くなった乗組員『久保山愛吉の墓碑銘』(1960‐62)として制作されたのが、今回取り上げたアルバムである。西ドイツの電子音楽スタジオの創設者であり、シュトックハウゼン電子音楽研究研鑽、制作に大きな寄与をした師でもあるヘルベルト・アイメルトHerbert Eimert(1897-1972)の電子音楽作品である。久保山愛吉への墓碑銘の朗読音声を素材にしているということもあり、また初期の頃の電子音楽作品という事もあってかシンプルな印象は否めないものの、徐々に徐々に墓碑銘の字句、音声が変容され電子音に溶けゆくがごとき電子処理の初々しさに興味惹かれて聴き入ることだろう。ほかにB面に『六つの習作』(1962)が収められている。どちらもケルン放送局電子音楽スタジオにての制作。



Herbert Eimert: Epitaph für Aikichi Kuboyama (1957/'60-1962) Terza parte





「核なき世界を 物理学者・湯川秀樹
http://www.nhk.or.jp/special/onair/061106.html




第五福竜丸展示館の公式ホームページ
http://d5f.org/



原子爆弾の理論と構造・・・・

核分裂に関する理論」

<エネルギー>

原子爆弾放射性元素核分裂反応によって放出されるエネルギーを利用する爆弾である。TNT火薬などの通常兵器に用いられる物質が化学反応によって原子間の結合エネルギーを解放するのに対して、原子爆弾では原子核を構成する核子の結合エネルギーが解放される。化学結合のエネルギーは電子ボルト (eV) のオーダーだが、核力の結合エネルギーはメガ電子ボルト (MeV) のオーダーである。そのため、原子爆弾で解放される単位質量あたりのエネルギーは通常兵器のそれに比べて約106倍も大きい。

核分裂

原子核を構成する核子は核力によって強く束縛されているため、通常はこの結合を切ってエネルギーを取り出すことは困難だが、原子番号の大きな原子核では、中性子をぶつけるなどして比較的小さなエネルギーを与えると原子核が液滴のように二つに分裂することがある。これを原子核分裂と呼ぶ。この核分裂によって、分裂前後の核子の結合エネルギーの差分が外部に放出される。(詳しくは核分裂反応を参照のこと。)・・・≫(WIKIPEDIA