yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

苦悩する原初の魂の響き。異形の死後中有世界の現前ピエール・アンリ『Le Voyage』(1962)

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         <天国といったところで何がそう簡単に、一足飛びに行けるものか!>
              
                            稲垣足穂


今回もアーティフィッシャル派の雄、ピエール・アンリPierre Henry(1927-)の登場。チベット教の教典『死者の書』を題材にリアリゼーションされた電子音楽作品である。そのチベット教の『死者の書』とは≪宗派を問わず、一般に「死者の書」と言う教典を臨終を向かえた人の枕元でラマ僧が読む習慣がある。死者がこの世に執着しないように、肉親、親類は遠ざけられる。その教典には死者が死後に出会う光景とその対処法が書かれている。死者はまず非常な畏怖を覚えるまばゆい光に出会う。しかし、これに勇気を持って飛び込めば、真理に融化し、成仏する。そうでないと7日後にまた別の光に直面して、同じ様な状況にたたされる。このようなことが7日毎に、49日まで繰り返される。光への融化がなければ、その後、死者の生前の行為、心に応じて地獄・餓鬼・畜生・人・阿修羅・天等、6つの世界のいずれかに生きているものの胎に入って行く。≫(ネットページより)などと説かれている解脱のための書である。あの世での存在が決まらず宙を舞って成仏せんと魂が迷うといわれる49日といい、7日ごとの取り決めといい、なにやらよく聞く教え、ハナシではある。中有にてさまよう魂の旅、それがこの『Le Voyage』(1962)である。あまりバリエーションを多くもたない電子音が、かえって異形を感じさせるから不思議である。死後世界へと旅立った悩める魂の言葉にならぬ苦界のさまが呻きのように鳴らされる電子音の軋み。生きるもののない荒涼とした地を這い、暗闇に渦巻く恐怖へと陥れる轟音などが、とことん意味性が剥奪され無機質に徹した電子音の異形音でパフォーマンスされる。悩み、苦しみの旅にふさわしく、これらの音には色がないのだ。凡百であれば、意味を持たす音で彩色し物語るところを、彼、ピエール・アンリは敢えてそうしない。いや、抑えている。だからこそよけいに異形の死後世界を現前させることになっているといえるのだろうか。アーティフィッシャルゆえに電子が音連れ、招き寄せた、かつて聞いたことのない初めて耳にする死後の声であり、迷える、苦悩する原初の魂の響きである。≪人はいつの時代であろうが<音>に神を聞くようである。<鈴>の音であろうがノイズであろうが、そこに神の気配を感じ、神の言葉を音に聞くのであろう。≫(ピエール・アンリ『MESSA DE LIVERPOOL』マイブログより)。まさしくピエールアンリの電子音は原初の神を招き寄せる。







ピエール・アンリの「DIEU」<神>、マイブログ――
http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/24451510.html

ピエール・アンリの 『MESSA DE LIVERPOOL』、マイブログ――
http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/29829938.html