yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

ジャン=クロード・エロワ(1938-)の混沌の電子騒・雑音ドローンの感動『SHANTI』(1972-73)。

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Jean Claude Eloy - "Prémonitions" (env. 21'):"SHÂNTI" ("Paix )" 1972-73 ,pour sons électroniques et concrets

              

≪切れ目なく電子音が空間を埋め尽くす。あらゆる音の境界定かならぬ未分明な音が延々とある時は轟々とあるときは沸き立つ如く沸々滔々と流れる。雑音であり、騒音のドローンである。さまざまな日本のロケーションでのフィールドレコーディングされた音源を使って、この作品は制作されている。ジャン=クロード・エロワJean-Claude Eloy(1938-)の『GAKU-NO-MICHI(楽の道)』(1977-78)LPレコード2枚組み。このミュージックコンクレート(具体音の電子処理されたもの)作品はエロワが日本のNHK電子音楽スタジオにて制作したもので、全5時間にも亘る長大な作品である。それをレコード2枚、凡そ約2時間にまとめ上げたもの。≫これは以前、拙ブログにての評文よりの引用である。今回取り上げるのも、同じ作曲家のジャン=クロード・エロワJean-Claude Eloy(1938-)によるこれまたLPレコード2枚に亘る長大な電子音楽である。多分購入した時期と作品の制作年代とが逆順になっていたせいか、今回のこのアルバム『SHANTI』の方が、先に紹介した『GAKU-NO-MICHI(楽の道)』よりのちの制作と思い込んでいた。さにあらずで、制作年を見ると1972~3年となっており、ドイツのケルン電子音楽スタジオで制作されたと記されている。ということで紹介イメージ 2順が逆になってしまっているのに今気付いたことであった。ところでリアリゼーション作品献呈はシュトックハウゼンにされている。『GAKU-NO-MICHI(楽の道)』(1977-78)がNHK電子音楽スタジオでの制作、したがって、さまざまな日本のロケーションでのフィールドレコーディングされた音源を使って、この作品は制作されている。またドイツのケルン電子音楽スタジオで制作された今回紹介の『SHANTI』(1972-73)は、そのタイトルがサンスクリット語で<平和、平安>を意味するとのことで、ナチスドイツの軍事的戦禍のなかでのさまざまな収録音などを素材に電子処理を施して制作されている。平安という意味もあり、そうしたものだけでないのは勿論だけれど。ところで、ここにも、というよりこの作品よりジャン=クロード・エロワはすでにして電子騒雑音のドローンを執拗なまでに延々と流し続ける手法を獲得している。これは今振り返って見ると先進であり、見事だ。≪こうまで延々と混沌とした未分明アマルガムな電子音のドローンが流されると、不思議に恍惚とした感覚にとらわれる。≫(『GAKU-NO-MICHI(楽の道)』ブログ文より)。私の感性がジャン=クロード・エロワの意図するところとは大きく遅れをとっていたのだろうか、ただ今聴いてその新鮮な感動に驚いている次第である。恥ずかしながら、これはスゴイ。まさに≪雑音は不思議な感動に満ちている。≫!圧倒する騒雑音を前に茫然自失、コトバを失う。それも轟々と切れ目なく騒雑音の流れるドローンである。≪ノイズへの不思議の郷愁的快感・エロスを感じるという方々にはいちどは聴いてみるべき優れたミュージックコンクレート作品である。≫(『GAKU-NO-MICHI(楽の道)』マイブログ文より)。さて、もう何度も引用しているのでウンザリのかたもおられるのではと憚られるけれど、懲りもせず再々録するとしよう。これ以上の騒雑音に関する考察を私は知らない。



『雑音に関するヒポテーゼの試み』松岡正剛<遊>1008(1979)より抜粋


≪雑音に陶然とするときがある。そんなとき、われわれは「全きランダムネス」に敬服しているともいえる。雑音がそれ自身、われわれの思惟を越えていることは、乱数表を作らざるをえなかった人類史からも証言できよう。≫

≪DNAの組み合わせには乱数表的チューリング・マシーンが介在しているのではないだろうか。そうでなくては、こんなヒト族になるはずがない。≫

≪ザーとたゅとうラジオ・ノイズに長いこと聞き入っていると、いつしか自分もノイズと一体になってしまう。さらに長いことノイズのただ中に身をさらしていると、ノイズ総体がことばを放ち始める。なつかしい天上音楽のようなこともある。ノイズが一次元あがって「このまま音」から「そのまま音」へ変わるのか。≫





ジャン=クロード・エロワ、関連マイブログ――
http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/42630996.html


Jean-Claude Eloy: Son de Méditation (Partie d'ouverture)