yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

シンプルで、その清冽な美しさを垣間見せるジョンケージの『コンチェルト』(1951)。即興演奏のカオスの高揚のうちに終結するコラージュ音楽、ルーカス・フォスの『バロックバリエーション』(1967)。

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            John Cage - Concert for Piano and Orchestra
            http://video.google.com/googleplayer.swf?docId=1786697868526409285&q =john+cage
先日に引き続きルーカス・フォスLukas foss(1922-)を取り上げよう。自作品『バロックバリエーションBAROQUE VARIATIONS』(1967)とジョン・ケージの『コンチェルト・CONCERTO for PREPARED PIANO & ORCHESTRA』(1951)を、自らが率いて自身の即興演奏のコンセプトの音楽実践の場とし、また現代音楽の普及に努め、米国での現代音楽のメッカと称されもしたニューヨークのBUFFALO PHILHARMONIC ORCHESTRAを指揮してのアルバムである。
どちらも聞きものである。というのも『バロックバリエーションBAROQUE VARIATIONS』(1967)は、先日とりあげたドイツ・ヴェルゴ盤に収められていた、1967年のワルシャワ音楽祭で大きな反響をもたらした『NON-IMPROVISATION』の即興演奏のコンセプトと、美術が先導したネオダダの価値破壊技法であるアサンブラージュ、コラージュ手法を音楽に導入した作品であるからである。
ここではVariation1には、ヘンデルのコンチェルトグロッソからLarghetto、Variation2には、スカルラッティのSonatas、Variation3では、バッハの無伴奏バイオリンパルティータのPreludeが遠くから浮かんでは消え入るようなノスタルジックな挿入コラージュで使われ、変奏されて演奏される。その変奏が徐々に重層されて、即興演奏のカオスの高揚のうちに終結する。
まさにタイトルどおり、バロック音楽の馴染み深い完結された美をもつ曲が変奏されて、安穏に夢見る如くにノスタルジーを呼び起こし、そして各ヴァリエーションの道行きが塗りつぶされた混沌のうちに終えるという興味深い作品である。
いつ聴いても、ノスタルジックな美と騒音混乱の対比には面白さを感じさせるものだ。まるでホールの床を修復するが如き木槌で叩いているような音の出現には笑いがこみあがってくるのだ。ま、ダダといえばダダである。と一人合点したものだった。
さて次なるジョン・ケージの『コンチェルト・CONCERTO for PREPARED PIANO & ORCHESTRA』(1951)の興味の惹くところは、この曲が日米の両国で、同じ1968年に初レコーディングが成されていた事である。
このアルバムのルーカス・フォス指揮によるものと、先日の拙ブログでとりあげた日本の現代音楽祭<オーケストラル・スペース68>での演奏である。
どちらも初レコーディングでありはするものの、とりわけ日本での演奏が68年の同年というのが痛快である。武満徹一柳慧の二人がオルガナイザーとしてほとんどすべてにわたって運営、選曲に携わり、日本での現代音楽隆盛の礎ともなった現代音楽祭で、この時期に演奏プログラムに組み込んだその意気の高さを思い知ることだろう。
さてその同年、1968年に初録音された2つの演奏であるが、私は、シロウトということでもあり、普段ほとんど演奏どうのこうのは意識しないたちである。単純に、初印象がほとんどすべてと思っている。
もっとも昨今のベストセラーと聞き及ぶ『人は見た目が9割』というような、露骨あけすけなもの言いには与しないけれど、ともかく最初に出会った演奏がベストだと思っているせいか、あれこれ同一曲を違った演奏家で比較し聴くような趣味は持ち合わせていない。
現代音楽の場合、ともかく数こなす事が先決という事もある。同一タイトルを買い揃えるなどとてもじゃないけど懐が間に合わないし、音盤も少ない。それに現代音楽を聴くというのは、名作を聴くというのといささか趣が違う。世評名作とすでに評価さだまっているもののみを聞くのとはちがって、駄作も含めての鑑賞である。演奏云々どころではなく、とりあえず作品を一度でも聴くのが先決で、多くの曲を聴くのがともかく第一のことなのである。
とはいえ、タマタマの機会ということもあり、おのおの聴き較べた。正直、軍配はこのルーカス・フォスの演奏の方と云っておこう。べつに、ピアニストに高橋悠治が共演しているという理由からではない。だんじて!。
ルーカス・フォスの方が、ケージの中世的ともいえる、装飾のない、シンプルで、その清冽な美しさを垣間見せる響きの世界が、私には好印象であった。フォスは分かっている。1951年という作品年代を鑑みるとき、他のピアノ作品などの醸す世界に近いのはルーカス・フォスの指揮によるパフォーマンスではないかと思える。




ルーカス・フォス(英文)
http://en.wikipedia.org/wiki/Lukas_Foss

ルーカス・フォスの全曲約30分の作品『Concerto for Percussion and Orchestra 』(1974)がリアルプレーヤーで聴けます。
是非聴いていただきたいものだ。