yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

衝迫的で緊張感に満ちた音楽とミシェルフーコーをYOUTUBEで発見。ジャン・バラケの『ピアノソナタ』(1950-52)を聴く。

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Barraque- Sonate pour Piano (1/5)

             

ジャン・バラケJean Barraque
イメージ 2さて、正月の間、暇にあかせてYOUTUBEをあれこれ検索覗いていて、どうした経緯で今回取り上げるジャン・バラケJean Barraque(1928-73)にたどり着いたのかはっきりした事を思い出せないのだけれど、それは哲学者ミシェル・フーコーMichel Foucault (1926-1984)のあの特徴ある眼光鋭いスキンヘッドの画像がチラッと見えたことにはじまる。フーコーのスティル写真によるスライドショー・ドキュメントであった。
時間はわずか1分22秒という短いものである。その背景音楽に流されている音楽がことのほかエキセントリックで衝迫的な緊張感に満ちた音楽だった。「すごい音楽だな」がまず最初の印象だった。それがジャン・バラケ「Concerto for clarinet, vibraphone & 6 groups of 3 instruments」(1962-68)であった。そうか、バラケ!か、そういえばバラケのレコードがあったはずと棚をまさぐった。
確かに記憶どおり一枚あった。ピエール・ブーレーズの傑作「ピアノ・ソナタ第2番」(1948)と並び評されるバラケの『ピアノソナタsonate pour piano』(1952)があった。蒐集当時は、たぶんブーレーズピアノソナタが強烈過ぎて印象薄かったのだろう。今でこそ、ネットで彼の情報の多少を日本語でも簡単に検索でき、それ故、その力量の評価が生前高かったと知ることができる。
だが、そのレコードを聴き返してみても、わたしの先の印象は変わらないようだ。たぶんブーレーズの作品が傑出<しすぎ>ているのだろう。しかしYOUTUBEで見つけた『Concerto…』の響きには魅せられた。もっともピアノソナタでも出だしはブーレーズのそれに遜色ない出来で、つかむ力は劣らずあったので、出だしだけでは持続・展開力があるのかどうかはわからない。
拙ブログにてジャン・バラケの稿を起こそうと思った理由には、YOUTUBEでの出会いと、もうひとつ、ネットで、このバラケを≪「呪われた天才」とみなされかねない音楽家≫として熱っぽく語っている記事を知ったからでもある。音楽に関して先鋭な評論も手がけている浅田彰氏のジャンバラケとミシェルフーコーそれにブーレーズとの関係も含めての興味深い論考を以下、恥ずかしいほどの長文に亘る抜粋であるけれど、引用させていただくことにする。≪・・・ところで、フーコーと並んで「呪われた天才」とみなされかねない音楽家に、かつてはピエール・ブーレーズのライヴァルとみなされていたジャン・バラケがいる。フーコーは、51年に知り合ったブーレーズから、おそらく翌年にバラケを紹介され、熱烈な関係を結んだ。フーコーブーレーズの共通点がルネ・シャールへの傾倒だとすると、フーコーとバラケを結びつけるのはヘルマン・ブロッホである。フーコーは、モーリス・ブランショのエッセー(後に『来るべき書物』に収められる)によって、ブロッホを知った。そして、すでにフーコーの影響で初期の歌曲をニーチェの詩に合わせて書き直した「セカンス」を作曲していたバラケは、フーコーに教えられたブロッホの『ヴェルギリウスの死』に魅せられ、それに基づく超大作のために数々の作品を作曲することになるのだ。だが、バラケはやがてフーコーの過激さに恐れをなし、56年には交際を絶つ。皮肉なのは、しかし、最終的に自己破壊衝動の波にさらわれたのがバラケの方だったということだ。アルコールに溺れた彼は、計画された超大作を完成することもなく、73年に45歳の若さで世を去る(1964年には交通事故に遭った上に自宅が火事でスコアーまで焼失。その後は病気に悩まされた末に1973年、45歳で死去。――引用者、注)のである。しかし、フーコーの場合と同様、われわれに必要なのは、「呪われた天才」の神話にこだわることなく、バラケの残した作品そのものと向かい合うことだろう。幸い、昨年バラケの全作品が3枚組のCD(CPO 999 569-2)にまとめられ、今年になってピアノ・ソナタの新録音(ECM 1621 453 914-2)も発表された。研究も出揃い始めた現在、いよいよバラケの再評価の機会がめぐってきたと言うことができるだろう。こうして聴き直してみると、若き日のバラケがブーレーズと並び称せられていたのも不思議ではないことがわかる。とくに、初期の傑作である長大なピアノ・ソナタ(52年)は、厳密な構造と奔放な自由の交錯によって聴く者を圧倒する。これまでも、イヴォンヌ・ロリオ、クロード・エルフェ、ロジャー・ウッドワード、そして全集盤ではステファン・リトウィンの録音があるが、とくに、誤植の多いスコアを手稿と照合して訂正しながらこの大曲を緊張感をもって弾き通してみせたヘルベルト・ヘイメージ 3ンクの新録音は、高い評価に値するだろう。また、声楽作品も興味深い。女声の多用、ヴィブラフォンやハープなどの音色への好みは、やはりブーレーズと共通するものだが、どちらかといえば、ブーレーズの作品が華麗でエクステンシヴな展開を特徴とするのに対し、バラケの作品はしばしば暴力的にさえ響くインテンシヴな集中を特徴とするといえるだろう。ブロッホに基づく一連の作品、とくに代表作「回復された時間」(57/68年)もさることながら、初期の作品「セカンス」(50-55年)は、その爆発的な力で、いまも聴く者に衝撃を与える。そこでわれわれは、若き哲学者と作曲家が出会い、火花を散らした、もはや回復されることのない時間を、一瞬垣間見るのである。≫(浅田彰氏、ネット記事論考より)さすがにコトバを紡いでなりわいとするプロの評言です。感謝。



ジャン=アンリ=アルフォンス・バラケ(Jean-Henri-Alphonse Barraqué , 1928 - 1973年)は、フランスの作曲家。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%90%E3%83%A9%E3%82%B1