yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

オリヴィエ・メシアン『(8つの)前奏曲集』(1928-29)と『音価と強度のモード』(1949‐50)を聴く。

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Messiaen: "Mode de valeurs et dintensites"(1949)

           
         
オリヴィエ・メシアンOlivier Messiaen
イメージ 2オリヴィエ・メシアンピアノ曲は、すでに拙ブログで≪オリヴィエ・メシアンイヴォンヌ・ロリオのピアノデュオによるコラボレーションの巧緻『アーメンの幻影』(1971)≫
http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/39200551.html、
≪ミシェル・ベロフによるオリヴィエ・メシアンの『幼子イエズスにそそぐ20のまなざし』(1944)メシアンドビュッシーを聴く≫
http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/37870513.html、
≪神のいない高橋悠治とピーター・ゼルキンのデュオ『アーメンの幻視・Vision de L’amen』≫
http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/35667432.html。
とタイトル打って、3枚取り上げている。
実際は、デュオ作品の『アーメンの幻影』は演奏の違いを聴くためもあってダブッテ取り上げているので、2作品でしかないのだけれど。どちらにせよ、傑作である事にまちがいないわけで、ドビュッシー好きであれば、この頃のメシアンは間違いなくおもしろい。平易さと新しい試みがバランスよく結果して、安心して現代音楽に馴染みのない人にも薦められる作品となっているのだ。
今回のアルバムの演奏者は、後妻でもある(ここにいたる経緯は悲劇でもあり、メシアンの人生を語る上でもひじょうに重要な出来事なのだけれど、そうした事などは是非とも心血注いで作られただろう下記の素晴らしいネットページを読んで了解していただきたい。また本文中にも引用させて頂いている。)
夫人のイヴォンヌ・ロリオである。この人はいいですね。好きな音色だ。淑【性質や動作がもの静かで上品であるさま。また、つつしみ深いさま。】(ネット辞書より)であり、粛然おごそかである。
精神がある。その宗教性?を云々する声もあるそうだけれど、なにもメシアンが信仰に篤いからといって音が宗教くさいとはこれいかにと言いたくなるが。まず『(8つの)前奏曲集huit preludes』(1928-29)。メシアン(1908-92)の生年からわかるように、実に学生時代20歳の時の作品である。
ドビュッシーの匂い濃厚といえば言えるけれど、甘いロマンティシズムからは抜けつつある。そこにはやはりシェーンベルクの革新、12音列・無調の到来が示す時代思潮が、歴史が影を落としているといえるのだろう。
第一次世界大戦(だいいちじせかいたいせん、英: World War I, 独: Erster Weltkrieg)は1914年から1918年にかけて戦われた初めての世界規模の大戦争である。≫(WIKIPEDIA
そして1917年はロシア革命である。すべてヨーロッパが主戦場であった。こうした社会秩序等の大きな変化暗転が観念世界に影として落とされていたとして何も不思議ではない。ジークムント・フロイトSigmund Freudは(1856 - 1939)であり、アルノルト・シェーンベルクArnold Schoenbergは (1874 - 1951)であり、ウラジーミル・イリイチレーニンは (1870 - 1924)である。そして、ナチの台頭アドルフ・ヒトラーの≪ナチ党を国会の第一党に押し上げた。議会の要請に従い、ヒンデンブルク大統領は1933年1月30日ヒトラーを首相に任命する。≫もう1939年のポーランド侵攻アウシュビッツの悲劇まで呵成の暗き歴史だった。
ヒトラー政権が非合法軍事政権ではなく議会政治・民主主義を梃子にした合法政権であったことを私たちは忘れるべきではない。党名は<国家社会主義ドイツ労働者党>であった。えらく話しが脱線してしまった。
さてこうした時代背景のもと、メシアンのこのごく初期の作品には、よく云われる≪調性に縛られない音楽としてシェーンベルクらは十二音技法を用いた。しかし、メシアンは調性に縛られない、かつ十二音技法のような無調的な音楽でもない新しい響きを探っていった。その過程の中で、彼は古今東西の旋法の数々を今一度見つめなおし、更にそれらとは全く別の彼独自の新しい旋法を編み出そうとした。その結果生まれたのが「移調の限られた旋法 (Les modes à transpositions limitées) 」である。・・・ 「移調の限られた旋法」(Les modes à transpositions limitées; 以下MTLと略)はメシアンが独自に、人工的に編み出した新しい旋法である。この旋法は初期から晩年に至るまで彼の多くの作品で用いられ、彼の作品に特徴的な旋律進行や彼独特の色彩感あふれる和声を生み出す理論的ベースとなっている。≫(下記ネット記事より抜粋引用)。
ここに彼の色彩感あふれる音色で人を魅きつけるそれら作品の秘密がある。それはシェーンベルクの無調に肯んずることできぬ音楽感性が、メシアンの「移調の限られた旋法」を選択し拠りどころとするところとなった。武満徹などもそのようだと聞く。そして戦後、トータルセリエールの道を切り開くこととなった、『音価と強度のモードquatre etudes de rythme』(1949‐50)で画期をなす作品を発表する。
≪1949年、現代音楽に重要な影響を与えた作品、「音価と強度のモード」が作曲された。この曲では音高にのみ音列を用いた十二音技法を更に発展させ、「音高」「持続」「強度」「アタック」の四要素においてそれぞれに関連づけたパラメーター用いられ、後のブーレーズの「構造 I」を初めとする「総音列(セリー)音楽」への入口を開いた。メシアン本来の作風とはかけ離れた実験的性格の強い作品ではあるが、その後の現代音楽に与えた影響ははかり知れない。≫(同上、抜粋引用)。ここでは、私は、力強い革新の意志を聞くといっておこう。だが色彩の豊かさは保持されている。やはり革新の中にあってもオリヴィエ・メシアンオリヴィエ・メシアンであり、摂理に祈る人である。そしてその革新性に、ブーレーズシュトックハウゼンメシアンの門を叩いたのだ。



オリヴィエ=ウジェーヌ=プロスペール=シャルル・メシアン(Olivier-Eugène-Prosper-Charles Messiaen, 1908 - 1992)は20世紀のフランスおよび世界を代表する作曲家。通常は「Olivier Messiaen(オリヴィエ・メシアン)」の名で知られる。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%82%A8%E3%83%BB%E3%83%A1%E3%82%B7%E3%82%A2%E3%83%B3

【Regards sur Olivier Messiaen オリヴィエ・メシアンに注ぐまなざし】
オリヴィエ・メシアンについての総合的なサイト.
http://www11.ocn.ne.jp/~messiaen/index.html



第一次世界大戦(だいいちじせかいたいせん、英: World War I, 独: Erster Weltkrieg)は1914年から1918年にかけて戦われた初めての世界規模の大戦争である。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%AC%E4%B8%80%E6%AC%A1%E4%B8%96%E7%95%8C%E5%A4%A7%E6%88%A6

ロシア革命(ロシアかくめい)とは、1917年にロシア帝国で起きた2度の革命、特に史上最初の社会主義国家樹立につながった十月革命(十一月革命)を指す。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%82%B7%E3%82%A2%E9%9D%A9%E5%91%BD