yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

ジェルジ・リゲティの淡くゆらめき生成流動する音色美『ラミフィケーションズ』(1969)ほか。

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Ligeti: "Ramifications"

           

ジェルジ・リゲティGyorgy Ligeti
イメージ 2【1927年、超ミクロの世界の原理をうちたてたハイゼンベルグの「不確定性原理」。その中心概念ともいえる、自然界にもともと内在する<ゆらぎ>。≪宇宙の中に、もともと理由もなく<ゆらぎ>という性質が存在していて、それが原因となって宇宙は、気まぐれにできたものらしい】≪宇宙の発生は「無」の<量子的ゆらぎ>によって説明できる】(佐治晴夫『ゆらぎの不思議』PHP文庫)というこの宇宙生成ゆらぎ説はひじょうに魅力的である。その淡い生成のそよとしたビミヨーなイメージ。≪ところで、「無」というのは物理的性質が定義できない状態のことだとお話しました。にもかかわらず、<「無」のゆらぎ>とはいったいどのようなことを意味しているのでしょうか。いま、あくまでも透明で目に見えない水を想像してください。そこにそよ風が吹いてきて水面にさざ波がたったとします。水面のゆらゆらとした縞模様がはじめて目に映るでしょう。「ゆらぎ」によって見えないものが見えたということです。・・・・・・淡い未分明の境、生成犇めく<ゆらぎ>のイメージがこのアルバム三曲に充満しているのだった。もちろんポリリズム、マイクロポリフォニーなどそうした書法上の斬新から来るニューロマンティシズムのメロディアスな響きの説明解析はプロにとっては必要なことだろう。それらはそちらの領分として、私にとっては、リゲティがその独創をもって音を綴り響かした技法ではなく、喚起するイメージ、それが引き連れてくるものが興味のもとなのであった。まさしく波のようにうねり、川面のさざ波の如く、ゆらぐビミョー多彩な美しい音色変化。清澄でありつつ明るくきらきらと輝く響き。微細微分、繊細にゆらぐ音の粒子たち。ブラウン運動の音の粒子、その音塊のゆらぎに漸進的ゆるやかに逸れ行く音の群れ。絶えざる犇めく生成のあわいに茫と、だがまた緊張の、個々の声高ではない音たちのひそやかななかにも明瞭な主張。清冽な精神の緊張と、生成のゆらぎとメロディアスなまでに美しい音のうねり。】(マイブログ―「ジェルジ・リゲティ『Chamber Concerto for 13instrumentalists』(1969-70)ほか」より抜粋引用)
これ以上に言うべき言葉を持たないのだけれど、要するにキーワードは、<アモルフ、不定形、ゆらぎ、うねり、波動、胎動>ということだろう。不定形でホログラフィックな音像のゆらめく音響世界と言ったらいいのだろうか。それは精神のトランスを要請する。リゲティは、こうした音響イメージを≪それ自体は静止しながらある種の内的運動を持った音響の連続と変化の過程を形成すること≫(ライナーノーツより)と語っている。一つの潮流でもあったグリッサンドするトーンクラスターのなかにあって、リゲティの淡くゆらめく生成の流動する音色美を独創しえたことにまったく感嘆のほかなく、認識の新地平を切りイメージ 3開いたものとしてやはり音楽史に燦然と屹立することだろう。70年前後の成果は噴出するが如き見事な作品群居並ぶ連峰と言えよう。どの作品も素晴らしい。収録曲は13奏者のための『室内協奏曲』(1969-70)。弦楽オーケストラのための『ラミフィケーションズ』(1969)。12の独奏弦楽器奏者のための『ラミフィケーションズ』(1969)。木管五重奏のための『10の小品』(1968)。そして、リゲティにとっては56年のハンガリー動乱を機にしての西側への亡命後、第1作めの完全な電子音のみの電子音楽作品である『アルティクラツィオン』(1957-58)が収録されており、興味深い。

                              『アルティクラツィオン』
                               symboric score


                 23th October 1956 Hungary, 1956
                 


ジェルジ・リゲティ(1923-2006)、オフィシャルサイト(独文、ただHOMEトップ画面右上またはこれ→Tonbeispieleをクリックすると、主要作品のサワリを試聴できます。)
http://www.gyoergy-ligeti.de/

ジェルジ・リゲティ関連マイブログ――
http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/45430110.html
http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/38756815.html
http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/38625831.html
http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/16318262.html
http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/38276064.html

音楽における  1/f ゆらぎ分析の理解 
http://www.bodysonic.cc/1fyuragi.htm
F分の1ゆらぎの謎にせまる
http://www2.athome.co.jp/academy/physics/phy03.html

ゆらぎ                            
松岡正剛の千夜千冊『エレガントな宇宙』ブライアン・グリーン【1】