yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

さみだれ舞うクセナキスの超絶的な難曲『エヴリアリ』(1973)、東洋的な響きのシンプルな世界ジョン・ケージの『季節はずれのバレンタイン』(1944)ほかサティーを高橋アキで聴く。

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            Yuji Takahashi_Herma(Iannis Xenakis)
            


高橋アキ
イメージ 2高橋アキといえば、云うまでもなく、現代音楽での特異な作曲家であり、ピアニストでもある高橋悠治の妹であることは、ご承知のとおり。また現代音楽普及に功績大であった評論家の今は亡き秋山邦晴の夫人である。兄と同様現代音楽演奏のスペシャリストとしてはやくから活躍している。今回取り上げるアルバム『A VALENTINE OUT OF SEASON』(1976)より前に、芸術祭優秀賞を受賞した3枚組みの、現代曲ばかり20曲を収録した『高橋アキの世界』(1973)を出している。何せ3枚組みであり、また収録曲も多岐にわたっていることもあり、紹介するのをためらってきた。このボリュームのあるBOXは後日にするとして、今回このアルバムをまず先に取り上げるきっかけとなったのも、先日来のYOUTUBEでの検索が一因である。サティークセナキス、それにジョンケージが入っており、尚且つ、武満徹、おまけにドビュッシーとくる。もう私にはたまらなくなるような選曲である。例によって、YOUTUBEですべて何らかの音源が愉しめるということで取り上げた次第。音と映像があるのにこれを使わず、言葉だけでこの稿綴るのもせいのないハナシで、大いに利用しての紹介にしたいとの心算からである。それはともかくとして、やはり一番心癒され愉しめるのがケージの初期のピアノ作品である。シンプルでピュアーなこの頃のピアノ作品はもう一方の収録曲のエリックサティーのグノシェンヌ(全6曲)と同様に、多分ケージの名をますます高らしめ支持されてゆくことだろう。それほどに過剰を廃したピアノは魅力である。≪このようなシンプルさに心惹かれる人はきっと多いのではと察する。それほど穏やかに心落ち着かせるものが確かにある。<music for marcel Duchamp>(1947)の東洋的な響きのシンプルな世界。<prelude for meditation>(1944)のモートンフェルドマンはここに精神的同類を嗅ぎ取ったのではと思えるような静謐さをたたえた世界。こうしたシンプルさの極みにのちのケージの革新者の姿が浮かびでてきようとは興味深いものであり、ケージはたぶん過剰な歴史の重みのそぎ落としの修練としてこの時期を雌伏していたのだろうか。ひとりぽつねんとがらんとしたピアノがあるだけの簡素極まる部屋で、この最終収録曲<DREAM>(1948)を作曲弾奏していたように思える。まことに簡素な居住まい、佇まい、なにごとかのはじまりとはかくあるのだろうか。静かにやってくるものにこそ真性があるのかもしれない。≫(拙ブログ稿「簡素な居住まい、佇まいのケージの初期ピアノ作品集」より引用)この初期作品作曲の44年頃、ケージは貧窮のどん底にあり、また時代は第二次世界大戦のさ中であった。それゆえにこそ≪「戦争中は大きな音響ばかりが世界を覆った。だから僕は、小さな響きで作曲したのだ」とのちに語った。≫(解説・秋山邦晴)そうである。ところでこのアルバムの興味を引くのが、クセナキスの超絶的な難曲『エヴリアリ』(1973)が聞けることである。押し寄せては引き、またバラバラと音が上から五月雨落ちてくる≪ダイナミックで激烈な音の運動が流動していく≫(秋山邦晴)さまは、圧巻である。この稿書き始める前、スピーカーで聞いていたときは、ずいぶんとソフト、メロウな感じだとの印象で、エッジのなさがメリハリのなさとして思えたのだけれど、稿に取り掛かるために違ったシステム構成で、尚且つヘッドホーンで聞いたところそうした印象が吹っ飛んでしまった。明瞭な音が耳に飛び込んできたのだ。いい加減なものだ。断然、クセナキスの男っ気のあるパルチザン戦士らしい散乱の勢い鋭いさみだれ撃ちの音が降ってきた。収録曲はクセナキス『エヴリアリEVRYALI』(1973)、武満徹『フォー・アウェイFOR AWAY』(1973)、ジョン・ケージ『季節はずれのバレンタインA VALENTINE OUT OF SEASON』(1944)、『ア・ルームA ROOM』、『マルセル・デュシャンのための音楽MUSIC FOR MARCEL DUCHAMP』、エリック・サティ『グノシェンヌ1~6GUNOSSIENNES』、それにクロード・ドビュッシー前奏曲集第2巻』より、<霧>、<風変わりなラヴィーヌ将軍>、<月の光が降りそそぐテラス>。


                     Gymnopedia No 1 (Erick satie)
                     



『楽譜の風景』Xenakis "Herma"の解説と演奏後記
http://homepage1.nifty.com/iberia/score_herma.htm