yuki-midorinomoriの日記

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技術と精神の類稀な現代の昇華結晶ルトスワフスキの『オーケストラのためのリーヴル』(1969)ほか。

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Lutoslawski: "Livre pour Orchestre" 1/2

           

ヴィトルト・ルトスワフスキWitold Lutosławski
イメージ 2今日、朝の自動車通勤の車中で、NHK・FM放送から流れていたルトスラフスキーWitold Lutosławski(1913 - 1994)特集には、正直驚いた。なんでも朝の7時20分から始まり、9時17分までと、おおよそ2時間のクラシック放送番組(再放送分)であるらしい。その時間帯は、まず朝のニュースからというので、ラジオ第一を7時40分の地方エリアの交通ニュースまで聴き、そこでFM音楽番組へというのが朝の定番である。朝っぱらから民放の小うるさい音楽番組は聞いてられないというだけの理由だけれど。だから聞き流す程度での鑑賞でしかない。古典曲はこうした聴き方しかしていない。その程度の知識と鑑賞力である。そうしたなか、ごく一般的なクラシック曲しか流さない放送で、まさかルトスラフスキーが、しかもあとでネットを覗いて確かめてみたところ、6曲がその2時間たっぷりの枠で流されているではないか。これは一体どうしたことか?別に、よくある没後、生誕とかの回想年に相当するものでもなさそうだ。それにしてもである。現代音楽特番ならいざ知らず、こうした一般向けの番組で聴けるとはまことに有難いことである。2時間も車に乗っているわけではないので、途中の数曲を聴いただけなのだけれど、幸いなことに感銘深い印象を与える名作の≪バルトークを追悼して書かれたという「弦楽オーケストラのための葬送の音楽」(1958)≫が聴けた。以前、拙ブログでこれを取り上げたとき≪これこそ荘重、気品ある作品であり、≫と評していたが、まさにそのとおりで、追悼にふさわしいそうした作品であった。ちなみに放送された曲をネットで確認したところ以下の如くであった。

パガニーニの主題による変奏曲(2台のピアノのための)」
                     ルトスワフスキ作曲
                       (5分15秒)
               (ピアノ)マルタ・アルゲリッチ
                 〃   ネルソン・フレーレ
              <PHILIPS 40CD-5>

管弦楽のための協奏曲」         ルトスワフスキ作曲
                      (28分20秒)
                  (管弦楽)NHK交響楽団
         (指揮)スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ
             <ALTUS ALT-031/2>

「葬送曲」                ルトスワフスキ作曲
 ・プロローグ ・変容 ・極点 ・エピローグ
                      (13分38秒)
「間奏曲」                ルトスワフスキ作曲
                       (6分29秒)
      (管弦楽ポーランド国立放送カトウィツェ交響楽団
                  (指揮)アントニ・ヴィト
              <NAXOS 8.553202>

「チェロ協奏曲」             ルトスワフスキ作曲
                      (23分05秒)
                 (チェロ)ハインリヒ・シフ
              (管弦楽バイエルン放送交響楽団
             (指揮)ヴィトルト・ルトスワフスキ
            <PHILIPS 35CD-579>

交響曲 第2番」            ルトスワフスキ作曲
 ・ためらいがちな ・ダイレクト
                      (31分15秒)
      (管弦楽ポーランド国立放送カトウィツェ交響楽団
                  (指揮)アントニ・ヴィト
              <NAXOS 8.553169>


いずれにしてもすべて聴くに値する、すばらしい確固とした精神性の満ちた作品ばかりである。技術と精神の類稀な昇華結晶である。≪引き締まったスピリチュアルな音のありようは、そうとでも解さないでは出てきそうにもない奥深い響きと私には思われる。実質と革新の真正な響きをこれら現代音楽作品に聴くことは至福である。≫と以前のルトスワフスキ拙ブログ稿で述べている。京セラ・稲盛財団のスポンサーによる、日本の世界に発信するノーベル賞といわれている京都賞。その芸術分野での受賞にふさわしい作品群である。ジョン・ケージオリヴィエ・メシアンらに並ぶ栄誉である。今回取り上げたアルバムは、1イメージ 3971年度のディスク大賞を受賞しているとのこと。収録曲は不確定要素を取り入れての試みが実った秀作『オーケストラのためのリーヴルLivre pour Orchestre』(1969)。それに同じポーランドの1928年生まれ、ということはシュトックハウゼンブーレーズ等と同世代ということになるベイルトTadeusz Baird(1928 - 1981)の『交響曲第三番Symphony No.3』(1969)。これもオーケストレーションの惚れ惚れするような音塊のエネルギッシュな流動する響きが聴けるいい作品である。≪抒情的なものと、劇的なもの、繊細なものと、荒々しいもの、旋律的な明瞭さと、音響のカオス≫(アルバム解説より)の対比がたくみに≪宥和≫処理されている。ともかく素晴らしくいい音がする。最弱から強、カオス的音塊まで、双方弦の響きには感心する。伝統というもののなせるところなのだろうか。さて、時間もなくなってきたのでとりあえずはここまでとする。以前にルトスワフスキを取り上げたものが3稿あるので、そちらでおおよその印象批評を読み取っていただきたい。

                                  タデウシュ・ベイルドTadeusz Baird





ヴィトルト・ルトスワフスキ,主要作品試聴出来ます。クリックは「試聴」と「買う」を間違わないようにしてください。
http://listen.jp/store/artist_82597.htm

TADEUSZ BAIRD(1928 - 1981)英文サイト
http://www.usc.edu/dept/polish_music/composer/baird.html


Witold Lutoslawski: Sinfonia No.3 (1972-1983) Prima parte