yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

余韻の深さに来し方万象を聞く静謐な響き。モートン・フェルドマンの『TRIADIC MEMORIES』(1981)

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Morton Feldman : Triadic memories

                  

モートン・フェルドマンMorton Feldman
イメージ 2以前のブログ稿にも引用したけれど≪フェルドマン自身は、静かな音は彼が興味を引く唯一のものであると述べた。≫(WIKIPEDIA)とあった。これは誰が聞いても頷ける言葉である。ほとんどの作品がこうした印象をもつ。初期作品からして一貫しているトーンである。(ただ、このページに貼り付けた最晩年の"Coptic Light" (1986)は彼にしては異質であり?である)この静謐さがモートン・フェルドマンMorton Feldman(1926 - 1987)の堪らない魅力であった。ところで念のため以前のブログ稿を読み返してみて、我ながらもうこれ以上私には述べることが尽きているようにおもえる自分の文章を、ここに再掲することとしよう『静謐のゆらぐ世界、モートン・フェルドマン』と題して以下の如くであった。≪かすかに放たれ、幽そけく消えゆく音達の生成と消滅の、それぞれ淡い境界に人の生誕と死を同定し、宙吊りにされた人の生の<無>の真実を静謐のうちに奏でるモートン・フェルドマン。意味も、存在もすべて静謐な世界に雲のごとく散りゆき霧のごとく消えゆく。自己というおぞましき存在を、在るか無きかの幽そけき響きへと静謐のうちに無化してゆき、安寧に身を横たえんとタナトスとの対話に静かにたたずむモートン・フェルドマン。モノトーンの静謐の世界は、かわたれに深まり行く闇でもあり、あかときやみに明けゆく闇でもある。静謐にゆらぐ境界域。消え入ることへのロマンティシズム、だが人は明確に終わりを終わることはできない。もちろん始まりを始めることもできない。宙吊りの存在でしかない人間には静謐のゆらぐ世界こそが本来であるのかもしれない。≫と述べていた。このよるべ無さ。まさにマルセル・デュシャンの墓碑銘「されど、死ぬのはいつも他人」という人間の単独性、その孤独、悲しみであり、空海の「生まれ生まれ生まれ生まれて生の始めに暗く(うまれうまれうまれうまれてしょうのはじめにくらく)死に死に死に死んで死の終りに冥し(しにしにしにしんでしのおわりにくらし)」≪わたしたちは生まれ生まれ生まれ生まれて、生のはじめがわからない、死に死に死に死んで、死のおわりをしらない≫斯く哀しくも宙吊りの存在であり、無底にか細くよるべ無き存在である。そうした思いが、今回取り上げるピアノソロ作品『TRIADIC MEMORIES』(1981)の奏でる徹底した静やかな音たちから聞き取ることだろう。ゆったりとした音のたゆたい。終末の孤独の響き、宇宙の孤独へと音のかなたから告げ知らされることだろう。来し方の記憶。それこそ<MEMORIES>であることだろう。それほどに余韻は深い。およそ2時間という長大な作品である。もちろん奏者によってその時間は自由である。≪80年代以降は、彼(フェルドマン)は一つの楽章で所要時間が60分以上、なおかつ音楽全体がピアニシモのままという、非常に長大な作品を作曲し始めた。この時期の作品に、「ヴァイオリンと弦楽四重奏」(1985年、約2時間)、「フィリップ・ガストンの為に」(1984年、約4時間)などがある。特に最後の「弦楽四重奏曲 II」(1983年)は単一楽章(休み無しの繰り返し付き)で5時間半を要する極端な例である。≫(WIKIPEDIA)だそうである。ジョン・ケージは長すぎるといったそうである。意図は何か?確かに純粋に美しい。曲がではない!音が!である。これ以上に言葉はない。たぶんどこから聞いてもいいのだ、音の輝き、煌めく<生>とともに万象を聞くということなのだろう。とはいっても、後半部のほうが聴きやすく美しい。もはやピアノの静謐な響きにつつまれているわが身の至福をおぼえることだろう。

武満徹―――

<私が表したかったのは静けさと深い沈黙である。>

<私は自分の作品が作者不明のものになってくれれば良いと思います。人々は私の音楽に対して自分の好きなように反応する自由をもっているべきです。>

<私の立場はデカルトのそれとはまったく相反するもので、自分のエゴを主張することに反対です。私にとって最も重要で神秘的なものは人間の存在という事実>です。


?b>Morton Feldman's "Coptic Light" (1986)
  Images From The Writings Of Michel Foucault
  

1. Michel Foucault, cover illustration for Alan Sheridan's 'The Will To Truth'
2. The Ship of Fools ('Madness and Civilization')
3. Marquis de Sade, by ManRay ('The Order of Things')
4. 'Las Meninas', by Velazquez ('The Order of Things')
5. Friedrich Nietzsche, by Munch ('Nietzsche, Genealogy, History')
6. Don Quixote, by Picasso ('The Order of Things')
7. Jeremy Bentham's Panopticon ('Discipline and Punish')
8. Jeremy Bentham ('Discipline and Punish')
9. Philippe Pinel ('Madness and Civilization')
10. Friedrich Hoelderlin ('The Father's "No" ')
11. David Ricardo ('The Order of Things')
12. Georges Bataille {'Preface to Transgression')
13. Jorge Luis Borges ('The Order of Things')
14. Rene Descartes ('Madness and Civilization')
15. Maurice Blanchot ('The Thought from Outside')
16. Georges Cuvier ('The Order of Things')
17. Xavier Bichat ('Birth of the Clinic')
18. Robert Damiens ('Discipline and Punish')
19. Raymond Roussel ('Raymond Roussel')
20. Plato ('The Use of Pleasure')
21. Herculine Barbin, the cover of Foucault's study ('Herculine Barbin')
22. Franz Bopp ('The Order of Things')
23. Antonin Artaud ('Madness and Civilization,' 'The Order of Things'))
24. Plutarch ('The Care of the Self')
25. Gustave Flaubert ('Fantasia of the Library')
26. Pierre Rivierre, the manuscript's first page
27. 'This Is Not A Pipe', by Magritte ('This Is Not a Pipe')




フェルドマンの3作品が鑑賞できるよう公開されています。ぜひ、その静謐の世界を一聴。
Art of the States: Morton Feldman three works by the composer
http://artofthestates.org/cgi-bin/composer.pl?comp=15


『楽譜の風景』さんホームページ
モートン・フェルドマンの世界 Morton Feldman [1926-1987]
http://homepage1.nifty.com/iberia/score_feldman.htm