yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

道教・老荘的感性を強く意識させる音たちの生成消滅小杉武久率いる『TAJMAHAL TRAVELERS』(1974)

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大磯海岸・24時間パフォーマンス1970
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      Taj Mahal Travellers on Tour

Taj Mahal Travelers - August 1974 タージ・マハル旅行団

            

イメージ 2小杉武久率いる『TAJMAHAL TRAVELERS』(1974)やはりレコードとはいえ、2枚組み、どこにもTIME データらしき文字が見当たらないが、多分20分×4面というところだろうか。しかし、意識して聴くでもなく、聴かぬでもなく、時は心地よい音の波乗りとともに伸びやかに、緩やかにながれてゆく。スタジオ録音とはいえテイクされたのが長大なコレクティブ・インプロヴィゼーションの一部だけであるかも知れず、正直なところは、分からない。何せ、海岸、公園、あらゆる会場などと電気さえ引けるところなら処かまわずの演奏スタイルである。音の波乗り、時空間に偏在するキャッチ・ウェーブとして、<音楽無産者・プロレタリアート小杉武久の特異なパフォーマンス、意識開放の実践のドキュメントを、私のブログで幾度と無く取り上げ紹介してきた。過去のブログをさかのぼって検索したところすでに6稿もあった。それほどに魅了していたということなのだろう。道教老荘的感性を強く意識させる音たちの生成消滅。ともかく宇宙、意識の拡張をすこぶる感じさせるパフォーマンスである。どのグイメージ 3ループパフォーマンスでも、やはり小杉武久のカリスマ的並外れた求心力、音への感性はそのコレックティブパフォーマンスの質を決定付けているようだ。長時間なのにだれる処がないのだ。その生成変転・波乗り、無化する開放性が生きているのだろう。≪「意識が資産として所有したものを無意識の無産の状態に絶えず投げ返すこと、そのような意識と無意識の間のキャッチボール。永久の無産革命そのプロセスの<メタ意識>としてのインプロヴィゼーション<キャッチ・ウエーヴ>」≫と傑作「キャッチ・ウエーヴ」のアルバムにコメントしている。一度でも聴けば、その瞑想性、しなやかさ、解放性、清冽の印象をつよく抱くことだろう。
以下は、小杉武久への拙ブログ文からの引用である。
                                      小杉武久スコア

≪素晴らしく心地よい異時空間へのウエーブ音をともなった瞑想的トリップを体験することだろう。電子回路が偶然として作り出す音の位相変化が微妙な揺れをもたらし、揺らぎのアルファーウェーブとなって心身の瞑想脱落必定である。素晴らしい心の清冽、伸びやかに開け放たれる精神の飛翔、悠久の音の波乗りに、心身軽やかに透き通り存在の空無へと解消することだろう。≫

≪「音楽は空気の振動だから、瞬間瞬間に消えていく、そうした定着できないものだからこそ、いいのだ」≫≪演奏は状況の目に見えないものの感覚を与えるべきであり、その神秘的な側面を暗示すべきだと思う。神秘的なものを見ることが重要なのだ。いわば透明な存在を成就することへ向かうことが、僕の音楽的思考のねらっていることだ。≫(小杉武久)。

≪観客にひとつのメッセージを伝えるといった慣習的なあり方、あるいは演奏が活動のひとつのジャンルみたいになっているような活動のし方。そんなやり方は、ぼくたちはとらない。結局は音を出したいという、自分の欲望。そういうところにだけ、ぼくらの音楽は立脚しているんですよ。≫(小杉武久)。

イメージ 4≪メンバーの七人がいつも集まるとは限らなかった。三人でやる時もあれば、二人の時もある。あるときは友達が参加することもあった。つまり集団の運び方そのものが、ふつうのロックグループとか言うものと異質なんですよ。自分の欲望に根ざしている。だから、ビールを飲みながら演奏したり、七人いれば演奏の最中に一人ぐらいサボったり、眠くなれば寝てしまう。トイレに行きたくなれば演奏中でも抜け出していくしね。・・・決して生活の共同体は結成しない。自分のやりたい時に演奏に参加し、集団から離れて、自分ひとりの音楽や生活をする自由がある。≫(小杉武久)。

≪つねに新しい発見をつづけること。ひらたくいえば、日々に新たなる生き生きした現実との触れあいこそが、かれにとっては重要なことなのだ。・・・小杉武久の音楽には、われわれが物事と関わる通常のありようを超えたひとつの清冽な世界が見られる。日常生活の環境のささやかな片隅で、小杉武久は「透明な存在」の波をキャッチするための永遠の旅をつづけているのである。≫(秋山邦晴「美術手帳1973・6」<小杉武久―キャッチウエーブの思想>))                 

Tha Taj-Mahal Travelers Live in Stockholm 1971