yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

女性版山下洋輔か、はたまた女性版セシル・テイラーか。イレーネ・シュヴァイツァーをピアニストに疾走するピエール・ファーヴルトリオの『サンタナSANTANA』(1968)

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ピエール・ファーヴルPierre Favre
イメージ 2いきなりペーター・コヴァルトPeter Kowaldの力強いベースが耳を撃つ。もう一気呵成女性版山下洋輔トリオである。といっても、あちらでは女性版セシル・テイラーと称されているらしい。その女性ピアニストとは、スイスのイレーネ・シュヴァイツァーIrene Schweizerである。
そしてドラムはこれまたスイスの名ドラマー、ピエール・ファーヴルPierre Favreである。録音は1968年とある。たいしたものである。
山下洋輔トリオが「DANCING古事記」「ミナのセカンドテーマ」、そして「木喰(もくじき)」など引っ提げブレークするよりもまえであり、この時期すでにしてこのようなパワフルなフリージャズが、しかも女性ジャズピアニストを擁して行なわれていたことは、ちょっとした驚きである。
今でこそ女性ジャズピアニストはさほど珍しくもないけれど、フリー系では、私は今浦島太郎でもあり、詳らかにしない。                 イレーネ・シュヴァイツァーIrene Schweizer
イメージ 3ところで。この今日紹介するアルバム『サンタナsantana』は彼女のリーダーアルバムではなくピエール・ファーヴルの名をリーダーとして冠したトリオとなっている。このアルバムのプロデュサーであり、簡単なライナーノーツを記しているホルストウェーバーhorst weberは
≪私はヨーロッパのフリージャズのドラマーとしてこのファーヴルと並ぶと思うのはオランダのハン・ベニンクに過ぎないと極言したいくらいである。ハン・ベニンクはファーヴルに比してヴァイタリティーには富んではいる。しかしファーヴルはテクニックもあり、またドラムという楽器をよく知っており、且つよく考えていて、彼のプレーには余計なものは一つとして存在しない。≫とまで高く評価している。たしかにハン・ベニンクの<狂>人的数寄のドラムと比べるとノーマルな情感の迸りといった印象をもつ。ハン・ベニンクとジョン・スティーヴンスの中間といったところだろうか。
B面1曲目「M.G.」はそのドラムソロから入ってゆくのだけれど、知と情とテクニックの均整の取れた素晴らしいドラムソロが聴ける。
それにしても録音が素晴らしい。個々の音像がハッキリと浮かびあがり、クリアーにしてダイナミックである。素晴らしいインタープレイがびんびんと響いてくるのだ。
もちろん個々のテクニックの所為もあるのだろうけれど。割って入るコヴァルトのベースが太くて剛直で演奏空間に芯を通す。
イメージ 4男がすなるフリージャズを女性ピアニストのシュヴァイツァーが果敢に、それもピアノタッチが流されず滑らず力強く情感を失わず叩き込むその果敢には快哉をおくろうと思う。
実を言うと、彼女に入れ込み、当時出ている限りのアルバムを、もちろんネット時代の今と違い店頭に出ている限りのであるが蒐めたものだ。セシル・テイラーも先日来より面白く聞き直し、今またイレーネ・シュバイツァーである。いよいよ楽しみが増えてきた。ありがたいことである。





ペーター・コヴァルトPeter Kowald

ピエール・ファーヴルPierre Favre(演奏の動画ビデオが視聴できます)
http://www.drummerworld.com/drummers/Pierre_Favre.html


ペーター・コヴァルトPeter Kowald
http://www.efi.group.shef.ac.uk/mkowald.html