yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

峻厳寡黙、冷厳にして張り詰めた美の世界。アントン・ウェーベルン『弦楽四重奏のための緩除楽章langsamer satz』(1905)ほか。

イメージ 1

Anton Webern - Six Bagatelles for String Quartet

             

アントン・ヴェーベルンAnton Webern
イメージ 2かつて浅田彰は、人間をその特質としてスキゾとパラゾ型に分けた。分裂症的としてのスキゾ、偏執狂的パラノイアとしてのパラゾだそうである。そのでんでゆくと、私はやたらといろいろなことに興味を示すスキゾである。しかし、現代音楽やフリージャズといった偏った傾向性にいささか固執するパラノイアックなところも無いではない。さて、どっちなのだろう。ま、どちらかといえば分裂症気味のスキゾの方が当たっているのかもしれない。ブログの内容を見ればそのジグザグ振り、勝手気ままぶりを見ればそのようにも思える。というのも、昨日はジャズで、今日はウェーベルンである。この現代音楽、とりわけブーレーズシュトックハウゼンに代表される無調セリーを作曲の原基に置いた戦後前衛音楽に多大の影響を与えた作曲家。しかもその極端に凝縮された峻厳とも言える寡黙な音響世界、≪密度の薄い音響体と冷たい情感、旋律の(極端な)跳躍≫(WIKIPEDIA)を作風とする彼のアルバムを、エネルギッシュに激しく疾走するフリージャズの翌日に取り上げ聞こうとするのだから。私の頭の中はどうか成っているのだろう。あまりにも振幅が激しすぎる事この上ない。ところで今日取り上げるアルバムはウェーベルン弦楽四重奏作品ばかり5曲が収録されたアルバムで、イタリア弦楽四重奏団が演奏している。だいぶ前のブログ開設間もない頃
多分決定版とも謳われたブーレーズのウェーベルン全集を『アントン・ウエーベルンの研ぎ澄まされた無調の美』とタイトルし取り上げたことがある。いま手元にそのアルバムの無い場所で文章綴っているので、わからないけれど、このアルバムのA面に収められている、ひじょうにロマンティックな後期ロマン派の匂い紛々とする作品『弦楽四重奏のための緩除楽章Langsamer Satz』(1905)および『弦楽四重奏曲Streichquartette』(1905)があったのか知らんと思うほどの美しい作品に出くわした。およそ後期のあの特徴的な寡黙な音のウェーベルンとはかけ離れた作品である。だが凝縮されてかつ美しい。冗長さがまったく無い美しさである。そうした意味では≪無駄をそぎ落とすという≫過剰を排した切り詰めた厳しさはそこにも見受けられて、ロマンの香りも決して嫌味なものではない。そしてB面の、シェーンベルクの手を離れての1909年作の作品『弦楽四重奏のための5楽章作品5Funf Satze fur Streichquartette』に移るや、はっきりとその冷厳寡黙、張り詰めた美の世界が歌われている。この変わり身、落差は大きい。どうしてだろう。そうした事どもは後日としよう。とはいえこのウェーベルン的音響世界の峻厳透徹はこの上も無く快感であり、世界への屹立絶巓(ぜってん)に与えられる孤影はすばらしいものがある。音は冷たく至上の輝きをはなっている。敢然と寡黙に峻厳として音たちは存在を主張する。『弦楽四重奏のための6つのバガテル作品9Sechs Bagatellen fur Streichquartette Op.9』(1913)そして最後に『弦楽四重奏曲作品28 Streichquartette Op.28』(1938)。ナチス・ドイツによるオーストリア共和国の吸収合併、ポーランド侵攻が始まる歴史的悲劇の前年であり、自らの芸術が≪「頽廃芸術」「文化的ボルシェヴィズム」の烙印を押され≫(WIKIPEDIA)生活の困窮にみまわれる、そうした時を背景にする作品である。さて最後に、ウェーベルンの極端に削ぎ落とされ縮減された作品に対して、師であるシェーンベルクは≪・・・かくも短く表現するためにはいかに節約が必要か思ってもみるがいい。一べつも一篇の詩に、一つの吐息も一篇の小説に引き延ばし得ようが、わずかの身振りから一篇の小説を、一息で幸せな運命を表現するとは:このような集中は雄々しい精神にふさわしい所にのみ見られるのだ。これらの作品を理解しえるのは、音によっては音で語り得るものだけが表現できるのだ、ということを信じる人たちだけである。≫と『弦楽四重奏のための6つのバガテル』作品序文に記しているそうである。また同じくシェーンベルクに師事したジョン・ケージウェーベルンイメージ 3の音楽に≪独自な時間感覚やリズム構成をとらえて、「音楽の神髄とは間合いと呼吸にあることを教えた作曲家である」という趣旨の発言をしている。≫(WIKIPEDIA)ということである。さてどうでもいい事だけれど、A面のロマン派的香りの濃厚な初期秀作品に、どこかで聞いたようなメロディーがあった。私の空耳かもしれないけれど、NHKテレビの何の番組のテーマ音楽か思い出せないが、加古隆の美しいメロディーフレーズでヒットした作品が浮かび上がってきた。NHK・FM放送の「きままにクラシック」の<どこか似ているぞコーナー>に擬いて三振か、ヒットかホームランかどうかは知らないが。

                                   イタリア弦楽四重奏団


Anton Webern(作品がダウンロードして聞けます、興味のある方はぜひ利用してください)
http://www.antonwebern.com/



ポーランド侵攻ポーランドしんこう)とは1939年9月1日にドイツ軍とドイツと同盟したスロヴァキアの軍部隊が、9月17日にソ連軍がポーランド領内に武力侵攻したことを指す。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89%E4%BE%B5%E6%94%BB