親しみやすく、心地よく聞きやすい、情緒性を感じさせる作品富樫 雅彦『スピリチュアル・ネイチャー』(1975)
なんでも、今日この取り上げるアルバム『スピリチュアル・ネイチャー』は1975年の≪スウィングジャーナル誌「ジャズディスク大賞」「日本ジャズ賞」をダブル受賞≫(WIKIPEDIA)という栄誉に輝く名盤だそうであるけれど、そうした情報記憶が飛んでしまっていることからして、当時のわたしの関心のほどが察せられようか。しかもこのレコードは若き日の蒐集音盤の中には無く、先日中古レコード店にて購入したものである。抜け落ちていたということもあったし、賞まで与えられているとあって購入したまでである。当時たぶん渡辺貞夫の名が見えたので敬遠していたのだろう。ま、彼のファンは多いこともあり、その実力、実績や音楽に関してとやかく言うのも憚られる。私がうけつけないというより熱心になれないまでのことである。これほどの親しみやすく聞きやすい、情緒性のつよい作品をこの時期富樫 雅彦が他作品でも残しているのかどうか、まじめに集中して聞いてこなかったので詳らかにしないけれど、どうなのだろう。以前ブログで取り上げた『ソング・フォー・マイセルフ』の方が同じ渡辺貞夫や、菊池雅章といった、どちらかといえばメインストリームの面々がメンバーに見えていたけれど、にもかかわらず試みの斬新さと音作りの多彩さは好ましいように思えた。もっともこれらのことは、アルバムの制作意図の違いから来るものなのかもしれない。『スピリチュアル・ネイチャー』の方は小オーケストラといってもいいような10人編成によるものであり、かたやの『ソング・フォー・マイセルフ』の方はデュオパフォーマンスをメインにするものだった。同じように和の情緒を歌い上げるようなパフォーマンスではあるけれど、私はといえば、インタープレイの深み、伸びやかさにおいて『ソング・フォー・マイセルフ』のデュオのほうに親しみを持つ。ま、好みの問題程度のことだけれど。このアルバムはその親しみのある、心地よい聞きやすさ、形の明瞭さを失わず判りやすさと巧みさにおいてバランスよく出来ているという事で賞が与えられるという栄誉に浴したということなのだろう。いい作品には違いない。けっして貶めてるつもりは毛頭無いことを申し添えておきます。