yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

革新のなかにさえ、音楽への思いは伝統に根ざしている、そうした印象を強く感じさせるアルバンベルク四重奏団のウェーベルン。

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ローマン・ハウベンシュトック・ラマティRoman Haubenstock-Ramati
イメージ 3先日、ブログで取り上げたアントン・ウェーベルン弦楽四重奏作品のアルバムは、イタリア弦楽四重奏団のもので録音は1970年のものだった。本来探していたレコードは今回取り上げるオーストリア・ウイーンのアルバンベルク四重奏団Alban Berg Quartettのこのレコードだったのだ。というのも、それは私がウェーベルンとベルクの作品のカップリングとばかり思っていたせいであった。さにあらずで、ベルクの記憶は作品ではなく、演奏者の名であった。したがってというか収録作品は、ウェーベルンの『Op.5』(1909)、『Op.9』(1913)、『Op.28』(1937-38)の代表的な3作品と、装飾的な奇抜華麗な図形楽譜と不確定コンセプトの推進者として有名な、イスラエル在のポーランドの作曲家ローマン・ハウベンシュトック・ラマティRoman Haubenstock-Ramatiの『Streichquartett Nr1”Mobile”』(1973)、それにErich Urbanner(1936-)の『Streichquartett』(1972)である。ここに収録されているウェーベルンの三作品とも先のイタリア弦楽四重奏団のアルバムでも聴けた。いい悪いではなくてこちらが先に紹介する羽目になったのだったけれど、ずいぶんと印象が違うのだった。(後期ロマン派の色香漂う初期作品が聞けたことは幸いだった。といっても購入した時点に一度は聞いているはずなのだけれどいい加減なものである。またこのアルバムの稿に取り掛かる前に決定版と謳われたブーレーズの4枚組みのウェーベルン全集の冊子で確認したところ、その初期(1905年)作品は収録されていなかった。また弦楽四重奏作品の演奏は「ジュリアード」のものだった。)は私などが思い入れ、あるいは思い込みとしてもっているシェーンベルクを代表する新ウイーン楽派のイメージに合致するのは、やはり?地としていけるこのアルバンベルク四重奏団の演奏の方のようだ。厳しさとともに、音色の捉え方にロマンの馥郁とした香気を感じたのだった。演奏へのだけではなく、作品ともども音楽への揺るぎの無さ、確信を聞くのだった。イタリア弦楽四重奏団のほうはかっちりとした明瞭さクリアーさが印象されたけれど、アルバンベルク四重奏団のほうは、陰影、強弱のなかにあってさえ先の<馥郁>といった表現にふさわしい響きがするのだった。革新のなかにさえ、音楽への思いは伝統に根ざしている、そうした印象を強く感じさせるアルバンベルク四重奏団のウェーベルンだった。ところで注目すべきローマン・ハウベンシュトック・ラマティへのさくべき時間がなくなってしまった。これも特徴のある作品で、不確定要素イメージ 2の取り入れられた作品とコメントされていなくては、そうと思えないほどにメリハリのあるダイナミズムの横溢する張り詰めた音響空間を存在させる弦楽作品となっている。鋭い個々の対比的な動きにはパッションという言葉が脳裏に浮かんできたほどである。もう一つの詳しくは知らない作曲家Erich Urbannerの作品も弦楽アンサンブルがよく生きており、まとまっていて飽きさせない、よくできた作品で面白く聞けた。今日は、取り掛かる前に野暮用で時間をとられ、中途半端に終わってしまった。(これはいつものことだけれど。)ハウベンシュトック=ラマティに関してもう少し割きたかったのだけれど、また別の機会にヴェルゴ盤の彼の作品集の登場のときまで待つことにして終えることとしよう。


                               ローマン・ハウベンシュトック・ラマティ
                               Roman Haubenstock-Ramatiの図形楽譜


新ウィーン楽派とは、主に1900年代初頭にかけて、ウィーンで活躍した作曲家の集団。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%B3%E6%A5%BD%E6%B4%BE