yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

誇りうる日本の現代音楽3作品、その深さと高みを1970年結成された演奏家集団『室内楽’70』(1976)で聴く。

イメージ 1

Meditation "Higan-bana" (Yoshio HACHIMURA )

           

三善晃
イメージ 2ヴァイオリン植木三郎、フルート野口龍、そしてピアノが松谷翠(結成時は若杉弘)というトリオで、1970年結成された演奏家集団『室内楽’70』。≪現代日本の代表的な作曲家の皆様に新作を委嘱、さしあたりむこう10年間、毎年2曲の新作初演を中心に演奏会を開いて行くことにしました。≫(1970、第1回演奏会パンフレットより)とあるように、今回取り上げるアルバムには、そうした作品の中から選ばれた3作品が収録されている。三善晃の『オマージュ』(1975)、八村義夫の『エリキサⅠ』(1974)、そして松村禎三アプサラスの庭』(1971-75)。この3人の名前を目にしただけで、食指が出るといったところではないだろうか。まず、面白くないといった印象の作品に出会ったという記憶のあまり無い作曲家たちである。ひじょうに密度と、質の高さを保持する傑出であることは、私の好み、贔屓を差し引いても肯けるのではないだろうか。三善晃の『オマージュ』。意外に日本的余情、間を強く感じさせるのには少なからずの驚きイメージ 3であった。尺八を思わせるフルートの音色がそうした印象をもたせたのかも知れない。そして結構パッショネートに(ピアノ)音が打鍵鋭く炸裂し、引き締まった世界を提示するのにも興抱かされた作品であった。まことにその深度と勁さは素晴らしい。八村義夫の『エリキサⅠ』。若くして、といっても、48歳での鬼籍入りは夭折という表現は当たらないかもしれないが、しかしその死は惜しまれて余りある。それほどに、後々まで幾度となく取り上げるだろう質の高い作品を残している。若き日、武満徹オーケストレーションを手伝い、またブーレーズの「ル・マルトー・サンメートル」、シェーンベルクなどの表現主義音楽への思いをもって、自らの音楽形成に与ってあるものとして述べているように、硬質なきらびやかな響きと、情念的な音の噴出、それゆえ響きの激情的な跳躍、そのダイナミックレンジな音の動きと濃淡の余韻のみごとさ。作品名にも当てられている<錯乱の論理>というにふさわしいほどの理性で統御しがたく奔流する情動の響きの美を聞くことができる。その魅イメージ 4力に人は感嘆することだろう。さて最後の松村禎三アプサラスの庭』。これは日本であるのに日本ではない。突き抜けた汎アジア、汎アジアを包摂した高みにまで突き進んだ世界といえるのだろうか。安きに流されることなく倦むことなく奏でられる哀しくも美しい叙情と力強さ、俗からの超脱するその叙情を謳う精神の勁き粘りのある持続は無比のものがある。斯く、素晴らしい音楽精神を聞くことになるだろう3作品が収められた、お薦めのアルバムといえるだろうか。



松村 禎三