yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

厳かさえ醸すサインウエーブの緩やかな動きで内省的であり精神性をつよく感じさせるベルント・アロイス・ツィンマーマンの電子音楽作品『Tratto』(1966)ほか。

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Bernd Alois Zimmermann : Perspektiven (1956) {PART 1/2}

           

ベルント・アロイス・ツィンマーマンBernd Alois Zimmermann
イメージ 2先日のブログ記事で、≪1938年、ベルリン生まれ。ヨーロッパ・ジャズ界の重鎮。ケルンの音楽大学でベルント・アイロス・ツィンマーマンとルドルフ・ペッツォルトに師事。1966年ベルリンジャズ祭のためにグローブ・ユニティ・オーケストラ(GUO)を結成。フリージャズと現代音楽の要素を融合させた演奏は大きな話題を呼んだ。≫(ネットページより)と、今やドイツフリージャズの重鎮と謂われていると聞き及ぶピアニスト、アレキサンダー・フォン・シュリッペンバッハの音楽上での師である作曲家のベルント・アロイス・ツィンマーマンBernd Alois Zimmermann(1918-1970)のアルバムが今日取り上げるものである。A面に針を降ろすや、なんだかジャズの雰囲気だなとおもっていたら、案の定そのとおりジャズだった。なぜジャズインプロヴィゼーションか?ドイツ語のみという中入れの解説書があるけれど私にはそれらが読めずわからない。またこうした師の影響があってシュリッペンバッハもフリージャズの途へ進んだのかどうかも詳らかにしない。ところでツィンマーマンといえば、私の理解するところ、戦後アメリカ美術界を席巻したコラージュ手法、そこにそうしたことと相同の既成音楽の価値の相対化によるコラージュをみる。その背景には、グローバルな交通の発展(大規模な戦争の頻発がそれを象徴しているだろう)帝国主義的な領土拡張とパラレルな民族文化への注視関心と取り込み(民族音楽への関心の高まり。民族学の飛躍的発展)等々による文化の多元化のきざし。産業社会・文化の爛熟、消費社会の到来、大衆社会化による絶対の崩壊、価値の相対化、主体の無力化を見ることができるだろう。このツィンマーマンは1918年の生まれで、戦後ポスト・ウェーベルンとして音楽史に華々しく登場したシュトックハウゼンブーレーズらの若き革新者より一世代上である。45年のドイツ敗戦を彼ははや27才という大人で迎えており、かたやシュトックハウゼンらは、戦争時多感なハイティーンである。これは決定的だっただろう。そうしたことで醒めた目がスタンスとしてあったのかも知れない。彼の音楽は、いわゆる<多元・多様式主義>と評されて有名だけれど、その一実践としてジャズの様式が取り入れられたということなのかもしれない。それらにはマンフレッド・ショーフのトランペットが聞ける。もちろんピアノはシュリッペンバッハ、それにベースはブッシ・ニーベルガル、ドラムはジャッキー・リーベツァイト、サックスはゲルト・デュデックと、当時ドイツフリージャズの前衛をひっぱっていた先覚者連中のサウンドが聞ける。作品としては取り立てて謂うほどのものではないが。ところでツィンマーマンの特徴とするコラージュ様式での作品は現代音楽・アヴァンギャルド専門のサイトでMP3データでのストリーミングが提供されているので、興味のある方は是非聞いていただき、その音楽形式の音楽史的な今日的意味、それらの登場の背景にあるものなどの芸術上の重要な問題を考えるうえでの手立てにしていただきたいものである。データの取り込みに5分程と、いささかまどろかしい我慢を必要とされるが、端折りなしの全部を聞くことができる。さて、本来取り上げるべき作品は、B面の電子音楽であった。これは推奨作品であるといっておこう。どちらかといえば、静かさが聞かせどころ、特徴とする作品で、ひじょうに内省的であり精神性をつよく感じさせる電子音だ。まるで生命のひそやかな胎動といったような神秘と厳かさえ醸すサインウエーブの緩やかな動きで終始する作品で、音色の移ろいに艶かさがあり、それらの表情には無機的な感じがしない。これは秀作品と間違いなく云えるだろう。この電子音楽作品『Tratto』は1966年ケルン電子音楽スタジオで制作されたもの。ピストル自殺で1970年没。謎を残しての退出であった。




U B U W E B : Bernd Alois Zimmermann――
下記のアドレスで記事中のツィンマーマンの特徴とするコラージュ作品がMP3データで聞けます
(データ取り込みに5分ほど要します。いいネット環境ではもっとスムーズなのでしょうが)
http://www.ubu.com/sound/zimmermann.html
≪Musique pour les soupers du Roi Ubu (1968)
Bernd Alois Zimmermann (1918-1970), Musique pour les soupers du Roi Ubu (1966), Ballet noir en sept parties et une entrée
Rundfunks-Sinfonie-Orchester Köln, conducted by Michael Gielen. A recording of the Westdeutschen Rundfunks, 1972.≫