yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

ヨーロッパ・セリーの精華を作品に結晶、現代アメリカの抜きんでた作曲家エリオット・カーター『DOUBLE CONCERTO』(59-61)と『Duo for violin & piano』(73‐74)

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Elliott Carter: Duo for Violin and Piano [2/2]

              

エリオット・カーターElliott Carter
イメージ 2まだブログには登場していないけれど、間宮芳生(みちお)のヴァイオリンソナタも、??の印象で、どうしたものかと了解しがたく考えあぐね、そのままうっちゃたままである。本当に奇妙な無伴奏ヴァイオリンソナタであった。その印象が今日紹介取り上げるエリオット・カーターElliott Carter(1908‐)のアルバムB面の『Duo for violin & piano』(1973-74)冒頭での、名手ポール・ズーコフスキーPaul Zukofskyのヴァイオリンソロを聞いて俄かに甦ってきたのだった。ヴァイオリンとピアノのやり取りが、まるで口三味線で語りかける風情なのだ。それも、ヴァイオリンが熱して語れど、ピアノは冷静といった感じでのなんともちぐはぐな趣ではじまり、終始するのだ。しかしこの対話が徐々に見事にアンサンブルしてゆくところから、魅力の世界が広がっていく。どんどん両者の世界が交感のうちに広がっていくのだ。この展開の妙。これが聞かせどころなのだろう。その構成展開は見事であり、やはり惹きこまれてゆく。徐々に両者の実りあるアンサンブルが豊かに展開される。ヴァイオリンの独り言が独り言でなくなり対者との世界が広がってゆく。それも濃密に、である。対者ピアノとともに心解き放たれ融和のうちに歌を謳う。うーん、いいですね!といった言葉が口をついて出てくる。さて順逆になったけれど、A面の『DOUBLE CONCERTO for harpsichord and piano with two chamber orchestras』(1959-61)など、たぶんユーラシア、大陸ヨーロッパでは大いに歓迎されるであろうという感じの、音色の多彩な展開と流動感がすばらしく、先のブログで取り上げたカーターの作品『3群のオーケストラによる交響曲』ブーレーズが初演しているのもうなずけるような、何か同質性をさえ感じさせる。アメリカ現代音楽をまじめに聞いたことがないのでいい加減な印象批評だとは思うけれど、しょうじき、カーターの作風は、ヨーロッパを、伝統という深さを強く感じるのだ。お勉強、習熟の域をもはや越えて、完全に伝統、ヨーロッパである。名前、出身を伏せて流せば、これが新大陸アメリカの作曲家の作品とはたぶん思わないのでは、といいたくなるほどの熟した感嘆もたらす音楽の世界だ。ブーレーズの作品にフィットする感性の持ち主(鑑賞者)は、たぶんエリオット・カーターの作品も受け入れることができることだろう。硬質な引き締まった響き、音色の多彩、ダイナミズム、どれをとってもヨーロッパ・セリーの精華、上質の音楽世界を聞かせてくれる。聞いて損はしない。ほとんどヨーロッパが発信の中心であるクラシカルな音楽にあってはアメリカの作曲家ということで一般性を得ていないだけだと言い募っておこう。おそらく突出したアメリカの現代作曲家といえるのではないだろうか。もちろん何らかの音楽史的に影響を与えるといった業績のものではなく、自存する上質の音楽の精華、独自世界の構成建立といった意味で抜きんでている。つまらないといった印象とは、ほとんど無縁である。



エリオット・カーターの素晴らしい弦楽四重奏作品などがストリーミングで聞けます。是非クリックしてみてください。
http://www.archive.org/details/ECarterLifeInMusic

Elliott Cook Carter, Jr. (1908‐)
http://en.wikipedia.org/wiki/Elliott_Carter



Donato Cabrera conducting Elliott Carter's Triple Duo