yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

ユーラシア・ヨーロッパ的精神の横溢する知的柔軟な感性。エリオット・カーターの初期作品『Sonata for Cello & Piano』(1948)ほか。

イメージ 1

Elliot Carter, Sonata for Flute, Oboe, Cello and Harpsichord (1952), Sylvia Marlowe - Part 1

              

エリオット・カーターelliott carter
イメージ 2またまたエリオット・カーターElliott Carter(1908-)の登場である。ジャケットからやおらレコードを取り出すや針をおろし、注意の半分は音楽に、そしてもう半分はコンピュータ文字入力へと意識は向かう。
流れてくるエリオット・カーターの音楽を聴きながら、ウン、やわらかく、余裕、あそびがあるな、などと思いながら聞いていて、てっきっり、新境地に入ったと言われている時期、以前の拙ブログに取り上げたげたピエール・ブーレーズが指揮・初演した(どうしてだか私は寡聞にして知らないが、ブーレーズはカーターの作品を結構取り上げているはず)カーターの作品『3群のオーケストラによる交響曲』が作曲された1976年前後の作品とばかり思って聞いていた。
そのうち気になりジャケットの諸データを見てびっくり。何といい加減な耳なのだろう。A面の『Sonata for Flute, Oboe, Cello & Harpsichord』の作曲は1952年とある。そしてB面の作品『Sonata for Cello & Piano』にいたっては1948年の作曲であり、ブログに取り上げた1951年の『弦楽四重奏No.1』より前である。
エリオット・カーターは1908年生まれであるから、もうすでに中堅、いちばん脂ののった時期の作品といえる。新古典主義的作風といえるのだろうか。それにしても伸びやかな感性だ。
アメリカの作曲家といえばアーロン・コープランド Aaron Copland(1900 - 1990)のイメージが強く、土の匂いのする親しみやすい音楽、いわば民俗派のそれを思うのだけれど、このエリオット・カーターはそうしたものとはずいぶんとイメージが違う。ヨーロッパ的伝統の精神を強く感じさせる。
教えを請うた師ウォルター・ピストンも出自はヨーロッパであり、もう一人はパリ留学先での師、名教師ナディア・ブーランジェということも背景にあるのかもしれない。俗に謂うあか抜けしているという印象である。それはB面の『Sonata for Cello & Piano』という戦後すぐの48年の作品などに典型である。ひじょうに洗練されたやわらかい雰囲気のある作品で沈鬱とはかけ離れた印象だ。
ちなみに、戦後現代音楽を推進する基点、その動向を決定付けた感のあるドイツのダルムシュタット夏季現代音楽講習会は1947年に発足している。
それにしても、よく出来ている作品だとの印象は覆らない。私が前知識なしで聞いて抱いた印象は、私の耳の拙さより、エリオット・カーターの作品の柔軟な感性の質を証示しているとも云えるのかも知れない。





エリオット・カーターの素晴らしい弦楽四重奏作品などがストリーミングで聞けます。是非クリックしてみてください。
http://www.archive.org/details/ECarterLifeInMusic





Sonata for Cello and Piano (1948)-Elliott Carter-1/4