yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

サステインする響きに抱かれ、身をひたし、吾をあずける快感放心の世界。狷介孤高ジャチント・シェルシのピアノソロ作品『Suite No.2』(1930)『Action Music』(1955)

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Scelsi- Action Music (1/2)

            

ジャチント・シェルシの<花押>
イメージ 2今日は、だいぶ前に中古レコード店で見つけたジャチント・シェルシGiacinto ScelsiのCD、したがってたまたま店の棚にあったから手にいれたという偶然の出会いの賜物という訳である。収録曲は、すべてピアノ独奏作品ばかりである。『Suite No.2』(1930)という25歳の時の作品と、戦後、現代音楽のうねりがポストウェーベルンとして大きな波となる時代の1955年に作曲された『Action Music』。確かに、一聴≪同音連打の固執やペダル効果など、明らかに音色重視の作曲法であったことが伺える。≫(WIKIPEDIA)と評されているように音のサステイン (sustain)への執拗なまでのこだわりを聴くことだろう。まさに響き、それも倍音へのこだわり、音色への際立った志向性は特異でさえある。しかしこうしたことは、音のゆくすえ、余韻を見届けるかのごとき精神の集中を要求し、また持続する音で包み込むその響きの世界はひじょうに魅力的である。メロディ、リズムは後景に退いて、ひたすらなる、より強烈な響きへの世界であり、まさに一心耳そばだてて<聴く>ピアノ作品であり、響きに抱かれ、響きに身をひたし、吾をあずける快感放心の世界である。のち、こうしたシェルシの独特異端な探求はフランスの現代音楽の大きな潮流となるスペクトル楽派を形成するにいたるものであった。サステイン (sustain)効果の余韻で包み込むような音の世界は、自然を、始原性を幻視させるものでもある。そうした意味での特異な精神体験をもたらす現代音楽として一度は聞いてイメージ 3頂きたい作品といえる。ところで、このジャチント・シェルシは狷介孤高、面前に姿を現さないことでも有名で、殆どまったくといっていいほどポートレイトが公表されていない。それもあってか、写真の変わりにサインをデザイン化したものが使用されている。紹介CD表紙にあるのはそれをベースに簡潔にデザインされたもので、この稿の左上に貼り込んだものがつねに使われているもので、オリジナルといえるものである。こうしたものは、日本では印章の源流といわれている<花押>に相当するのだろうか。それにしてもどうだろう、何か日本的な感じがしないだろうか。



                            ジャチント・シェルシの手描き<花押>


Scelsi- Sonata No. 3 (1/3)