Max Reger - Phantasie und Fuge über B-A-C-H, op. 46
ヴォルフガング・フォルトナーWolfgang Fortner (1907-1987)。さてどれほどの認知があるのだろうか。フォルトナーは戦後現代音楽の推進発展に、とりわけ
ダルムシュタット夏期講習会に参集する若き前衛作曲家世代に多大の影響を与えたとされる。彼に師事した作曲家としては(私の知っている限りでのピックアップでしかないけれど), Hans Werner Henze, Milko Kelemen, Rudolf Kelterborn, Nam June Paik, Wolfgang Rihm, Hans Zender, Bernd Alois Zimmermann, Heinz Werner Zimmermann,らの名が見える。後の超前衛のヴィデオアーティスト、
ナム・ジュン・パイクの名前が見えるのも面白い。そうしたポジションにいた戦後ドイツ現代
音楽史にとって重要な作曲家である。戦前は≪
ポリフォニーを主体とした
ネオバロック風のものであり、バッハとレーガーの影響を強く見せるものであった・・・第2次世界大戦後、一種の12音技法を採用することになる。しかし、この12音技法は
シェーンベルクのものをそのまま受け入れたものではなく、彼自身の必要性に由来した、変形された12音技法である。≫(解説・武田明倫)そうである。たしかにA面の『ルカによる
聖霊降臨の物語・
テノール独唱、6声の
混声合唱、11楽器とオルガンのための』(1962-63)という現代の宗教曲のもつ雰囲気も
レーガーの影響(フォルトナーは孫弟子にあたる)を感じさせる新古典的様式と12音技法をスピリチュアルにミックスした荘重ささえ感じさせる宗教的雰囲気のある作品となっている。≪主題である『
聖霊降臨の物語』の表現ために、作曲技法上の
イデオロギーにとらわれることなく、グレゴリアン聖歌的な旋律展開、
バロック風の音形式、打楽器によるリズム構成、ポスト・
ウェーベルン風の音色処理などが縦横に活用されている。≫(同上)B面は『トリプルム・3台のピアノとオーケストラのための』(1965-66)。これも≪技法的には多彩≫といわれているように、古くもなし、かといって前衛でもなし、しかし中途半端では終わっていない。このセンスの確かさ、技法の取り込みの真率が、先にあげた、多くの才能を輩出したゆえんでもあるのだろう。ところで、今日帰宅途上、自動車のなかで中途から聞いたので曲名分からずに聞いていたNHK・FMラジオから流れていた
交響曲が、なんともしまりのないダラダラした曲で、なんなのだこれはと印象しながら聴いていたその曲は
ショスタコービチの「
交響曲第10番」(1957)だった。それに比べればはるかにましなヴォルフガング・フォルトナーの収録曲であった。さて、このヴォルフガング・フォルトナーは、世紀の哲学者
マルティン・ハイデガーと同じく≪In 1941 he joined the Nazi Party≫(
WIKIPEDIA)とあるように戦時中
ナチス党員であったそうである。とりわけ哲学者
マルティン・ハイデガーのこの
ナチス党員問題が喧しいこんにち、これらをどう捉えたらいいのか、私はいまだに考えあぐねている。
マルティン・ハイデガーこそは我が若き日々、最大の思想的影響被りせし哲学者であるからだ。