yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

冷たい抒情であり抽象的造形美のきわみ。緊張感漂わせた硬質の構造美。ブーレーズ『四重奏のための書・抜粋』(1949-62)。

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Pierre Boulez, Livre pour quatuor, Part II, Quatuor Parrenin

           

イメージ 2ピエール・ブーレーズPierre Boulez(1925 - )には、精神の弛緩は無縁なのだろうか。とまで思わしめる、その引き締まった硬質の響きはまことに魅力この上ない。いわゆるトータルセリーによる創造世界の極北とまで言い募りたいほどの歴史的精華といえるだろうか。私には、冷厳ともいえるこの厳格な構造的世界の音色はいわゆる自立した美の敢然と聳立する雄峰を見る思いである。まさに響きは輝き放ち起っているのだった。今日紹介するのは『四重奏のための書・抜粋』。これは、じつに1949年に作曲されてから1962年の最終パートまで書きつがれた作品で、その時代、時代の書法の変遷が書き込まれているという面でも興味深い作品なのだろう。ブーレーズの作品には多いことだけれど。ところで以前私のブログでも少し違った収録パートの米・メインストリーム盤を取り上げている。今回のアルバムにはメインストリーム盤にはなかったⅢa、Ⅲb、Ⅲcの章・パートが加えて収めれれていイメージ 3る。ところで、B面の『弦楽四重奏のための作品<群島Ⅱ>』(1969)のブルガリア生まれのフランスの作曲家ブークールシュリエフ André Boucourechliev(1925-97)がこのレコード解説の中で斯く述べている。すなわち≪『四重奏のための書』は、歴史的な作品でありながら、時の移ろいから解き放たれている。この作品は、ストラヴィンスキーベートーヴェンの後期の四重奏曲に関してつい先頃あきらかにしたあの思想にまさに直結する。――「それが生まれた時に現代的であった作品は、永久に現代的でありつづける」。≫まさに至言である。ブーレーズは、とりわけ初期作品はすばらしい。輝きは色あせてはいない。緊張感漂わせた硬質の構造美はまったくもって冷たい抒情であり抽象的造形美のきわみである。

                          ブークールシュリエフAndré Boucourechliev



André Boucourechliev : Archipel II pour Quatuor à cordes {1/3}