バーンスタイン指揮のオーケストラとジャズコンボのコラボが生きているラリー･オースティンの『Improvisations for Orchestra & Jazz Soloists』(1961)ほか。
Aurora Borealis Musique de György Ligeti, Atmosphères
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レナード・バーンスタインLeonard Bernstein（1918 - 1990）が現代音楽を振る。本人も作曲をするのだから現代音楽への取り組みがあってもおかしくはないが。あまりまじめに聞いていないのでコメント差し控えたいとは思うけれど、革新的な試みがなされているわけでもなく、とりたてて聞いてみたいという気があまりしなかったとだけは言っておこう。「ウエストサイド・ストーリー」も、映画に魅入られれて、その後、バーンスタイン作曲作品ということで聞いたような具合であった。本領はやはり指揮、啓蒙音楽活動だったように思える。そのオーバーアクションともいえる指揮ぶりは観ている分にはおもしろかったけれど。
そのバーンスタインが、収録曲のすべてが１９６１年に作曲されたジェルジ・リゲティGyorgy Ligetiの『Atmospheres』とモートン・フェルドマンMorton Feldman『Out of “Last Piece's”』。それにバーンスタインが最も感応している風情であったラリー･オースティンLarry Austinの『Improvisations for Orchestra & Jazz Soloists』。それに、ニューヨーク・フィルと指揮者バースタインによる、スタートとストップのサイン以外取り決めなしのオーケストラ版完全即興演奏とコメントされているトータル５分ばかりの『four improvisation by the orchestra』。
ジェルジ・リゲティの『atmospheres』は音群トーンクラスター書法での音楽史上の代表作といえよう。
そしてモートン・フェルドマンの持続する静かな響きを特徴とする『Out of “Last Piece's”』。いずれも、ロマンティックな色調に染められ演奏されている。
いつも思うことだけれど、古典をものするからこそ指揮者として名声が得られるということもあるのだろうか、マエストロの振る現代音楽は概してロマンティシズムに彩られたアマイ現代音楽になるきらいがある。たぶんそうでなくては、彼らの感性は受け付けないのだろう。はた迷惑といえばいえるけれど。
マエストロのそれでなくとも、時代が経てば概ねその傾向があるようだ。武満徹の作品でも、時代を経るにつれ、そうした傾向が見受けられる。だんだんとアマ味の武満、ロマンティックな武満になっていると見受けられる。死とか暗さとか深遠とかそうしたイメージの奥深い精神性が響いてこなくなっている。美
しいドビュッシー的な音楽に仕上げられ、祭り上げられてるように感じないでもない。それはともかく、このアルバムでは、先に言ったように、ジャズの生き生きしたインプロヴィゼーションが取り入れられ、作品に躍動する生の動きを得ての会心作、パフォーマンスとなっているのがラリー･オースティンの『Improvisations for Orchestra & Jazz Soloists』である。これはいい。
ジャズパートのソリストにトランペットがドン・エリスdon ellis、ベースにバール・フィリップスbarre phillips、ドラムにジョー・コクッゾjoe cocuzzo。とりわけドン・エリスはトランペットという華やかな楽器のせいもるのかもしれないが、生き生きとした素晴らしいソロをパフォーマンスしている。ジャズパートが素晴らしく生きている現代音楽といえるだろう。
このラリー・オースティンなる作曲家はこのアルバムで知るのみだけれど、この『Improvisations for Orchestra & Jazz Soloists』は伝統的なオーケストラとジャズとのインタープレイ、コラボレーションの成功例といえるのではないだろうか。ジャズへの理解、造詣の深い指揮者バーンスタインあっての名演といえるのかもしれないが。
ラリー･オースティンLarry Austin
