yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

雷鳴轟きわたり炎熱吹きすさぶ断末の地獄、凄まじいノイズサウンドのサルヴァトーレ・マルチラノの『L’s GA』(1967)ほか。

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Salvatore Martirano - L's GA for Gassed-Masked Politico,Helium Bomb,and Two Channel

              

サルヴァトーレ・マルチラノSalvatore Martirano
イメージ 2まあ、なんとオドロオドロしいサウンド世界である事よ。というのが正直、先ず一等最初の印象であることは大方の聴者の共通するところだろう。まるで人類の終末、断末の叫び、呻きのごとくであり、雷鳴轟きわたり炎熱吹きすさぶ断末の地獄である。簡潔にいい得ているネットCDショップの宣伝レヴューをここに引用しよう。≪イリノイ大学で教授を務めていた作曲家Salvatore Martiranoによる、傑作テープ・コラージュ音源・・・24分の大作[For gassed-masked politico helium bomb]が強烈。前半は地響きのように響くボイスが徐々に電子ノイズへと姿を変え、後半になると今度は様々に変調されたテキスト・リーディングが飛び交う悪夢の世界!!とにかく凄まじい地獄のような世界にただ聴き入ってしまいます!!≫まさにこのとおりのサウンド世界である。ガスマスクを着けた異様な風体の演者と、ヘリュームガスによる変声とマグネティックテープにより絶大な効果をつくりあげている。ノイズ数寄には堪らない音源であることだろう。もっともA面全部を占める『L’s GA For gassed-masked politico helium bomb,and two channel tape』(1967)の強烈さに比べて、B面の2作品『Ballad』(1966)は、ジャズバラードの要素をたくみに現代音楽に取り入れた作品であり人間のエモーションを掬い取っておもしろく、『Octet』(1963)は純然たる正統的なセリー作品でかっちりと仕上げられており、その力量(音色への目配せ)の程はこの作品を聴いただけでも分かる。私などこの手(点描的な無調)の作品がすきなせいか、A面の強烈もいいけれど、この作品の完成度の高さに感じ入った。この2作品だけでもこの作曲家の力量が十二分に窺われており、聴いて損はしないアルバムである。ちなみにイリノイ大学は前衛音楽、コンピュータ音楽(研究)のメッカであったところである。拙ブログで以前取り上げた、コンピュータを作曲のための計算処理に使って作曲された世界で最初の作品といわれている『イリアック組曲Illiac Suite for String Quartet』(1957)を作曲したレジャレン・ヒラー (Lejaren Hiller) (1924-1994)が在ったところである。そのレジャレン・ヒラー が1958年に創設したイリノイ大学の実験音楽スタジオがそうしたメッカたる位置に押し上げたとも言えるのだろう。ジョンケージとの共作で壮絶な≪三台のハープシコード(Antoinette Vischer,Neely Bruce,David Tudor)パフォーマンスとプログランミングされての上といいながら、ランダムに鳴らされるコンピュータによって生成された51もの音響テープとの凄まじいまでの騒雑音に満ちた音響空間。最初から最後まで徹頭徹尾<美>を排除したような騒音で空間を埋め尽くすこうした試み≫のダダ的なノイズ音楽作品『HPSCHD』(1967-69)も残している。




Salvatore Martirano - Ballad (1966) [2/2]