yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

日本人におおいにフィットする音色と深い余韻で魅了する、濃密で知性的な響き。武満とゆかりのあるロジャー・レイノルズの「Ping」(1968)と「Traces」(1969)。

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Roger Reynolds ~ Traces (1968) For ensemble and electronics

              

イメージ 2さて、きょうはアメリカの作曲家ロジャー・レイノルズ Roger Reynolds
。実験的でありつつバランスの取れた知性を感じさせる、日本にもなじみのある作曲家。武満徹のオーガナイズする現代音楽祭をアシストし、また実際に日本に滞在して交流・音楽活動をしていおり、その意味では少なからずの縁のある作曲家といえるのだろう。日本だけではなく世界の主な音楽祭への運営等まで含めたかかわりをもつ行動力と、才能をもつ優れた作曲家であり、バランスの取れた知性だといえるだろうか。ミシガン大学での、音楽革新の時代を象徴する、電子技術等の発展を背景に、成熟しつつあるあらゆる芸術様式を巻き込んでのミュージックシアターの実践グループ「ONCE」を、のち電子音楽で名を馳せ、いまや大御所となった感のあるロバート・アシュレイRobert AshleyやゴードンムンマGordon Mumma、それにジャズをご存知の方であれば、いまやアメリフュージョン界の大御所だそうだけれど、ピアニストのボブ・ジェームス Bob Jamesらの錚錚たる若き俊英たちをオーガナイズし、ミシガンを前衛の発信拠点たらしめた革新の意気高く鋭い、非アメリカ的感性を持つ作曲家である。幾度かわがブログに登場し称揚した、構成と音色のあり方におよそアメリカ的ではないヨーロッパ的作風エリオット・カーターElliott Carterと同様、その音楽は濃密で深みのある知性的な響きを感じさせる、いやそれどころか日本人におおいにフィットする音色と深く且つ質の高い余韻で魅了するものだ。きょう取り上げる米CRIレーベルのこのレコードは1971年に賞(The American Academy of Arts and Letters)を与えられており、まさしくそれに妥当する、すばらしい作品が収められている。アメリカにこのような余情を深く感じさせクォリティーの高い作品を提示する作曲家の認知に驚く。またその知性からにじみ出る響きの品のよさもすばらしい。「Ping」(1968)と「Traces」(1969)ともども、電子(変換)機器とアコースティック楽器を使っての作品。静と動の対比、間、余韻、どれをとってもすばらしい。「Ping」(1968)での作曲家自身の演奏するピアノもすばらしいし、「Traces」(1969)でピアノを演奏する高橋悠治のエレクトロニクス音響とのメリハリのパフォーマンスも聞きものであった。それらハイクォリティーの作品に驚く事だろう。是非のお薦めの作品であり、作曲家であるとしてこの稿擱くことにしよう。
興味をもたれた方はぜひ、Art of the Statesをクリックしてロジャー・レイノルズRoger Reynoldsの公開されている作品音源「Mosaic (wind + piano)」 (1962)と「Wedge(chamber/large)」 (1961)の20代後半の初期作品でそのナイーブで良質の作品を聞いていただきたいものです。




Roger Reynolds: ...the serpent-snapping eye [1/2]