yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

「力強い素朴な、しかも迫力に富むユニゾンの音の束…」(佐藤允彦)猛然と且つインテリジェントにジャズって古代をさかのぼり、シャーマニスティックな土俗のエネルギーの奔流を歌い上げて見事『邪馬台賦』’72。

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Toshiyuki Miyama and His New Herd: Masahiko Sato - Yamataifu - Ichi (part one)

              

佐藤 允彦
イメージ 2≪牧―「……でこの曲(『邪馬台賦』)を書いた君の本心は……?」

佐藤―「ジャズがいろいろ変わってきてフリーフォームだとか何とか……ガチャガチャやってるでしょう?しかしそれ以上にもっと力強いもの、もっとヴァイタリティに富んだものは何だろうかと模索している間に気づいたのがユニゾンの再発見だということなんです。力強い素朴な、しかも迫力に富むユニゾンの音の束……」

牧―「……しかしね、皮肉みたいで悪いけど、ユニゾンはジャズの歴史にとっても決して新しいことではないし、ましてや音楽的にも古い手法じゃない?ジャズに限ってみてもバップの初期は一つのユニゾンの再発見だしそれ以前にもりつなんかでいくらでも用いられている……」

佐藤―「そう、ユニゾンそれ自体はたしかに何も新しくないですね。しかしそれはいわゆる西欧的な合奏のフレージングをキチッと合わせる西欧的なユニゾンなんですよ。ところがね、たとえばお寺でお経をきく、あれユニゾンですよね。しかし強烈にせまるものがある。あれをきいていると決して西欧的に整えられたフレージングではない……むしろユニゾンの流れのなかで自由にイキをついだり、音の出るギリギリのところまで伸ばしてイキをとるという……いや、これはお経に限らず、近世の邦楽にもよく見られる日本音楽特有のイキのとりかたね、そしてそれが集積して生じるあの力強い説得力ね、あれが試みたかったんです……」≫(解説書、監修者・牧芳雄との対談記事より)

そう、この力強い生命力をジャズへと、それもビッグバンドのエネルギッシュな音塊にあずけて歌い上げたのがこのアルバムといえるだろうか。

このユニゾンでの最初の出だしはひじょうに印象的だ。たしかに古代シャーマニズム卑弥呼 邪馬台国創生の原始エネルギーをイメージさす。直接もろに特有の日本音階が出てくるわけではない。戦前民俗派のような楽天振り、コンプレックスとない交ぜの頑なな民俗(族)への捩れたおもねりは此処にはない。それひとつとってみても確かな音楽的成熟がここにはある。猛然と且つインテリジェントにジャズって古代をさかのぼり、シャーマニスティックな土俗のエネルギーの奔流を歌い上げて見事なアルバムである。その音楽的イマジネーションの斬新に讃すること大なるアルバムといえるだろうか。ビッグバンドジャズの魅力、その音塊の炸裂するエネルギーの魅力最大に発揮してまことに爽快のきわみだ。はっきり謂って日本のジャズの優れたまず一等の成果のビッグバンドジャズ作品であると断じよう。もっとも私ごとき弩シロウトがいうまでもなくこのアルバムには1972年度芸術祭優秀賞が冠せられている。

作曲・編曲:佐藤允彦
佐藤允彦:piano
宮間利之とニューハード
羽鳥幸次,村田文治,藤崎邦夫,佐野健一:trumpet
片岡輝彦,上高政通,戸倉誠一,青木武:trombone
中山進治,小黒和命:alto sax
斎藤清,前田章二:tenor sax
松井三樹:baritone sax
山木幸三郎:guitar,今城嘉信:piano
国定正夫:bass,広見優:drums