yuki-midorinomoriの日記

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クロアチアの『Dubravko Detoni』。炸裂の予感を感じさせるピアニッシモ。意志と情念がみごとなまでに関与したエレクトロアコースティックな音楽

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Je Vous Salue Sarajevo - Jean-luc Godard

       

イメージ 2今日は旧ユーゴスラビアから1991年独立した、かの紛争絶えないことで名だたる東ヨーロッパ、バルカン半島に位置するクロアチア共和国の首都ザグレブの産であるDubravko_Detoniデュブラフコ・デトニ Dubravko Detoni(1937 - ) 。自国およびポーランドで修学の後、パリ、ダルムシュタット等へ研鑽のために出向いたとある。それ以上の詳細は私には分からない。購入した当時の印象はまるで記憶にないのだけれど、しかしこれは聴き応えがあった。ひじょうなインパクトを持った作品群で埋められており特筆のアルバムと言えるだろう。たしかに、この作曲家にとってもこのフランス・フィリップスの銀ジャケ現代音楽シリーズ「Philips Prospective series」でのこのアルバム『Dubravko Detoni』はヨーロッパ現代音楽シーンに少なからずの衝撃を与えた作品らしく、これを持って世にその名を知らしめたそうである。ジャケットにもユーゴスラヴィアアヴァンギャルド・ミュージックとタイピンッグされている。
≪1914年6月28日に、オーストリアハンガリー二重帝国の皇帝フランツ・ヨーゼフ1世
甥および皇太子であったフランツ・フェルディナント大公がサラエボ において妻と共に暗殺された≫(WIKIPEDIA)この銃声が第一次世界大戦のトリガーとなったのもたえざる紛争、その坩堝ともいえるバルカンの地であった。私たちには推し量りがたい精神のディストーションdistortionがそもそも民族歴史的に、彼の地バルカンに醸成され存在し続けているいるのではと思わすほどに緊張と激しさがその響きのなかに聴き取ることができるようだ。「GRAPHIE Ⅰ」のパイプオルガン独奏にしろ、マグネティックテープと声とアンサンブルのための「PHONOMORPHIA Ⅲ」での断続的な音響の破壊的ダイナミックレンジは、勝手な此方の想像かもしれないけれど戦場のそれのように聴こえなくもない。静寂も人間の心が強く関与した意志的な、そう、潜むといった静けさのように思わせる。炸裂の予感を感じさせるピアニッシモと言えるだろうか。「GRAPHIEⅢ」でのこうした緊張感はひじょうな魅力だ。意志と情念がみごとなまでに関与したエレクトロアコースティックな音楽で、聴きなおしてみてこれは収穫の一枚だった。