アルバン・ベルクの『弦楽四重奏曲作品3』(1925)』『弦楽四重奏のための<抒情組曲>』。拮抗し緊張を湛えた抒情と潤いのある弦楽の響き。
シェーンベルク、ウェーベルン、アルバン・ベルクAlban Maria Johannes Berg(1885 - 1935)。彼らは、無調、12音技法による音楽を果敢した作曲家たちであり、なおかつ師弟関係にあった。この3人のうち誰を好むかは色々あるだろうけれど、私は、はっきりと言おう。ウェーベルンである。このことは拙ブログでも≪峻厳寡黙、冷厳にして張り詰めた美の世界≫その≪研ぎ澄まされた無調の美≫などとさんざん言ってきた。それに比し師のシェーンベルクの後期ロマン派的残滓は、美しくもありドラマティックでもあり作品の凄さはともかくとして、いささか気分よろしくなかった。そして今日取り上げる≪12音技法の中に調性を織り込んだ作風で知られる。≫(WIKIPEDIA)アルバン・ベルク。この作曲家も師のシェーンベルクと同じ勝手な思い込みでまじめには聴いてこなかった。というのも私のモノサシの基準はウェーベルンの透徹した≪峻厳寡黙≫な音色・響きだった所為とも言える。今もってそれは変わらないのだけれど。しかしこの音楽ブログを始めてからは、そうと決め付けて遣り過すわけにもいかなくなった。あれやこれやと聴き直している間に思い込みを解くべく再考迫られていることが少なからずでてきた。此方の歳の所為、感性の変移ということもあるのだろう。あれほど遠ざけていたシェーンベルクの後期ロマン派の匂い芬々の初期作品も聴きなおすに及んで、その質の高さ完成度に驚く始末。ということもあって、今回のアルバン・ベルクの『弦楽四重奏曲 作品3』『弦楽四重奏のための<抒情組曲>』をBOOKOFFで買ってきた。やはり虚心に聴くべきであった。ひと言、抒情の質が違うのだった。潤いのある弦楽の響き、引き締まった、緊張を湛えた抒情。身を任せ流されるのではなく拮抗する抒情。屹立、対峙する精神。こうした思いに捉われるのはとりわけ1925年、作曲家25歳のときの清新の作といえる『弦楽四重奏曲 作品3』の方である。これは素晴らしい。≪「・・・その音楽語法の豊かさと自由さ、表現の力強さと確実さ、入念な仕上げと著しい独創性によって、信じられないほどの驚きを私に与えたのである。」≫(解説・諸井誠より)とは師のシェーンベルクがこの『弦楽四重奏曲 作品3』へ贈った賛辞の言葉だそうである。
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