yuki-midorinomoriの日記

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現代音楽作曲家『水野修孝のJAZZ ORCHESTRA '73』。水野修孝的オートノミー・フリージャズとしてコレクティブパフォーマンスに妙味感じさせる後半部。

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水野修孝:ジャズオーケストラ'73

             

イメージ 2今日は現代音楽の作曲家が試みたビッグバンドジャズトして世に問い、高い評価も得た『水野修孝のJAZZ ORCHESTRA '73』を取り上げる。拙ブログで順逆であるけれど、すでに≪現代音楽作曲家、水野修孝の遠慮がちなビッグバンドジャズ≫と題して75年度に出された第二弾の「JAZZ ORCHESTRA 75」を取り上げている。また作曲家・水野修孝(みずの しゅうこう、1934 - )の可能性を秘めた注目すべき偶然性を取り込む作曲手法の「オートノミー」で書かれた作品収録のアルバムを≪武満らのアヴァンギャルド集団<実験工房>に唯一の演奏家として参加、戦後、国際的ピアニストとして楽界を先導した園田高弘弾く、水野修孝「ピアノのための仮象」(1967)ほか現代音楽ピアノ作品。≫としてだいぶ前に投稿した。それと≪・・・またケージが提起した偶然性、不確定性概念を、今日で言うところの複雑系での秩序生成の考えを先取りしての音響生成(オートノミー)に具現せんとした先進性に瞠目した水野修孝の「混声合唱のためのオートノミー」もはいっており、・・・≫として≪声という、生命ある人にとっての初源の現象と歌と音楽。パロールとラングのせめぎあう<音楽・声>生成の熱き場への通時、共時的果敢LP7枚組み『合唱音楽の領域・その新しい地平』(1975)≫も取り上げた。それらは注目すべき成果であった。さて、≪・・・十年以上も前だが今タージマハール旅行団で活躍している小杉武久君と一緒に即興演奏のグループを作っていた事があった。その時以来僕は集団的即興演奏と言う事が興味の中心になっている。又僕はジャズオーケストラのつんざくようなサウンドをこの上なく愛するものである。ヨーロッパ風のオーケストラがどんなに大勢集まっても出て来ないパンチのきいた鋭いサウンド、これ等のものが僕の中でぐるぐるとまわりながらひとつの作品になった。≫(解説パンフ・水野修孝“ジャズとのかかわりあいについて”)まさにビートの効いたつんざくサウンドに満ちた現代音楽家の手によるビッグバンドジャズである。前半部冒頭の入り方は作曲家自論のオートノミー(複雑多様な個々の振る舞いから自立的な秩序生成へと向うプロセス)をなにやら感じさせるが、以後は全くのオーソドックスなビッグバンドジャズで、ソロを日野皓正(tp),森剣治(alto sax),金井英人(b)らが取っており聴きもの。素晴らしいソロパフォーマンスが聴ける。そして後半部に入ると一転現代音楽的様相になるけれども、これはむしろ水野修孝的オートノミー・フリージャズとしてコレクティブパフォーマンスに妙味感じさせるものといえるだろうか。こちらのほうが私には、そのうねるような自立的な音色展開に魅力を感じたのだけれど。ところで、この後半部では金井英人 (b),高柳昌行 (guit)のフリージャズへの熱意、意気込みを感じさせるソロとなっている。これも今となっては記念ものといえよう。とにもかくにも、≪ジャズオーケストラのつんざくようなサウンドをこの上なく愛するものである。≫と作曲家・水野修孝自らが強調しているように≪作曲者として是非ともお願いしたいことがひとつある。それは僕の音楽は出来るだけボリュームをいっぱいに上げて大音量で聴かなくてはあまり意味がないということです。なるべく大きな音でガーンとやってもらいたいのです。もし小さな音でカサコソと鳴ったら困るのです。ボリュームの圧力が重要な生命だからです。・・・≫と断わっている。ま、言われなくてもビッグバンドの醍醐味は、音圧が腹に響くほどでなくては味わえないだろうけれど。最後に、先にも言ったけれど、水野修孝ジャズの本領は後半部に在りといい募って、この稿終えるとしよう。


『JAZZ ORCHESTRA '73』
Toshiyuki miyama&The Neew Herd pulus All-Star Guests/水野修孝(みずのしゅうこう)+ニュー・ハード 
日野皓正 Terumasa Hino(tp),森剣治 Mori Kenji(alto sax),金井英人 HidetoKanai(b),高柳昌行Mayusayukiaka Taknagi(guit), ジョー水城(perc.)武田和三,数原晋,岸義和、熱田修二、羽鳥幸二、佐野健一(tp)片岡輝彦、上高政通、早川隆、内田賢英、青木武,戸倉誠一(trb),小黒和命、木村功(alto.sax)森守,井上誠二(tenor sax),平野繁(baritonesax),佐野博美、佐野正明、四方高志、中村誠一(clarinet)、伊藤晶明(elecbass),四方田勇男(dr)