yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

池内 友次郎『弦楽四重奏曲』(1946)ほか。甘美な叙情的メロディが時代めいていていささかの感がしないでもないけれど、叙情的でありつつ 彫琢された構成ゆえか弦に厚みを加えて響きが豊かなのだ。

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イメージ 2こんなに美しく洗練された弦楽四重奏曲であるとは、恐れ入りましたといったところだろうか。叙情的でありつつ、 彫琢された構成ゆえか弦に厚みを加えて響きが豊かなのだ。池内 友次郎(いけのうち ともじろう、1906 - 1991)の「弦楽四重奏曲プレリュードとフーガ」。今日取上げるレコードのB面に収められているこの曲は≪戦争中に書き進められ、1946年に完成。同年5月、戦後初めての日本現代音楽協会例会において、松本弦楽四重奏団により初演された。≫(解説・野田暉行)そうだ。また≪この曲は、いわば、作曲者がパリ留学時代に得たもの。そして、それ以後追い続けたものの総決算であり、この重厚な作品を境として、作風は一連のソナチネによる簡明な枯淡の世界へと転換してゆくのである。≫とあるように、その変移の意図が奈辺にあったのか私には不勉強ゆえ知る由もないけれど、先の印象懐かせるほどのよくできた作品だからしてまことに残念なことのように思える。以前ブログ投稿記事≪知的品格の備わった豊麗で美しく響く安部 幸明(1911- )『弦楽四重奏曲第7番』(1950)ほか作品集≫に収められていた作品が、まさしく≪この重厚な作品を境として、作風は一連のソナチネによる簡明な枯淡の世界へと転換してゆくのである。≫と評されている『チェロのためのソナチネ』だった。ということもあってか、その記事に【つぎの池内 友次郎(いけのうち ともじろう・1906-1991)『チェロのためのソナチネ』(1957)。俳人高浜虚子の次男である。そして<門下から矢代秋雄松村禎三、林光、三善晃など多数の作曲家を輩出した>(WIKIPEDIA)教育者としても知られている。しかし作品を聴く限りこの池内 友次郎はもっぱら教育者でその才があったのだろうと思われる。「青は藍(あい)より出(い)でて藍より青し」名伯楽ということなのか、これはこれで大きな貢献と顕彰さるべきなのだろう。】などとあまり良い評価をしていなかった。しかしこの「弦楽四重奏曲プレリュードとフーガ」はいい。フランス仕込みの書法を確かに手の内にしていたのだ。どうしてこの線でいかなかったのだろう。もっとも、甘美な叙情的メロディが何か時代めいていていささかの感がしないでもないけれど。A面の「ソプラノと管弦楽ための三つの小品 謡曲“熊(ゆや)野”」は1942年の作品。戦時中のものであり、そのタイトルからしておおよそが察せられることだろう。まさしく、戦前の作品である。こんなこと言っては先人に対して失礼とは思うけれど、時代だね、といった印象は拭えない。