yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

フィンランドの女性作曲家、カイヤ・サーリアホ『サーリアホ作品集』(2001)。繊細で余情深いこの感性の豊かさ!彩り豊かな響き、スペクトル楽派の美質結晶を聴く。

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Kaija Saariaho : Sept Papillons (2000) pour violoncello

            

イメージ 2なかなかに聴き応えのある作品集でした。とひとまず先に言っておこう。北欧はフィンランドの女性作曲家カイヤ・サーリアホ(Kaija Saariaho, 1952 - )が今日取り上げる作曲家。初めて耳にする作曲家だ。音盤のCDはいつもの如く中央図書館での予約貸し出しでのもの。こんなのがあるとは知らなかった。なんでも現在は生地フィンランドではなく研鑽の地フランスをそのまま居場所とし、彼の地で活躍しているとのことだ。フランス電子音楽のメッカIRCAMを研鑽の場とした如く、自身の関心も音響、<響き>の開発獲得だったようだ。フランスを根城とする現代音楽の一つの流れを作り出した音響楽派あるいはスペクトル楽派(École spectrale)の影響のもとに彼女の作品は形成されている。音を微に入り細に入りしての徹底的な聴き込みから、新しい音の姿を提示する。それは電子技術時代の申し子ともいえるのだろうか。アコースティックな追求のみからは到底達し得ない音色の創造。確かにかつて耳にした事のないような響きをつぎから次へと繰り出し多彩な音色、響きで斬新な音楽が奏でられる。これは魅力だ。それとこちらが勝手につくりあげている北欧のイメージなのかもしれないが、神秘的で歴史時間の奥行き感じさせる余韻をたっぷりと含んだ、深みを感じさせる響きはまことに魅力的だ。≪夢幻的かつ繊細きわまりない音響≫と通販レビューで評されていたけれど、そのとおりだ。俗っぽさなどこれっぽっちもなくすばらしい。弦の響きが余韻深く息づいているヴァイオリン協奏曲「グラール・テアトルGRAAL THEATRE」(1994)(ソロ:ギドン・クレーメル)、およびチェロ協奏曲「アメールAMERS」(1992)(ソロ:アンシ・カルットゥネン)。それにオーケストラとの声楽作品。こんなのだったら違和感なく聴ける声楽作品だ。艶っぽく繊細、それにメロディアス、オーケストラの響きが陰影見事に色彩豊かな音でその歌を支える、その頃合いが心地よい。シェーンベルクの時代めいた暗く生硬な表現主義的なシュプレッヒシュティンメを現代的洗練で緩やかにまろやかにした感じだ。作曲家カイヤ・サーリアホの感性のしなやかさの成せるところか、それとも時代ゆえの洗練か。いままで旧ソ連を出自とする現代の女性作曲家グバイドゥーリナをいくつか投稿してきたけれど、このフィンランドのカイヤ・サーリアホも、優るとも劣らぬ精神性を感じさせて、これから追ってゆきたい作曲家の一人として記憶されたことだった。



収録曲――

グラール・テアトル GRAAL THEATRE(聖杯の劇場)
作曲 1994年
初演 1995年8月29日、ロンドン(ギドン・クレーメル(vn)/BBC交響楽団/エサ=ペッカ・サロネン(指揮))

魂の城 CHATEAU DE L'AME
1.La liane(蔦植物)/2.A la terre(地球に)/3.La liane/4.Pour repousser l'esprit(魂を追い返すために)/5.Les formules(決まり文句)
作曲 1995年
初演 1995年8月10日、ザルツブルク(ドーン・アップショー(S)/アーノルド・シェーンベルク合唱団/ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団/エサ=ペッカ・サロネン(指揮))

アメール AMERS(航路目標)
作曲 1992年
初演 1992年12月8日、ロンドン(アンッシ・カルットゥネン(vc)/アヴァンティ室内管弦楽団/ユッカ=ペッカ・サラステ(指揮))



Saariaho: "Du cristal" 1/2