山田耕筰『ピアノ作品全集』(1995)CD2枚組み。その訥々として紡ぎだされた音たちの、なんと初々しく清冽なことか。一音一音を聴き込み、確かめ、そして愛おしむかのようにピアノは純に響く。
Kôsçak Yamada : 忘れ難きモスコーの夜 (山田耕筰のコメント付)
「その屋敷から流れ出る音は賛美歌ではなく、数千の星を銀盤の上にころがしたような美しい音である。私の小さい胸はその妙音に驚き、臆病な私も、その音楽が聞こえだすと、日が落ちていても家を走り出した。そして異人館の柵にもたれ、その音楽が消えてなくなるまで、茫然と聞き惚れていた。」(山田耕筰・自伝『はるかなり青春の調べ』)