yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

ヴィンコ・グロボカールら4人編成の即興演奏集団「NEW PHONIC ART」(1971)。≪有機的に生まれる反応の連鎖≫が作り出す緊張感に満ちた圧倒的にスリリングな音響空間。

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michel portal & bernard lubat improvisent

        


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つい先日、≪『ヴィンコ・グロボカールの音楽』(1973)。60年央から70年代にかけての集団即興演奏の熱気。ヴィルトーゾがなす集団即興演奏の凄み。煌めく空間の密度と緊張感。≫とタイトルしてアルバムを取上げたさい、順逆で、先に「NEW PHONIC ART」(1971)のドイツ・ヴェルゴ盤を取上げるべきだったかも、と述べた。そのヴェルゴ盤の登場。先日の『ヴィンコ・グロボカールの音楽』(1973)は比較的多人数の編成によるコレクティヴインプロヴィゼーションの試みだった。しかしそれは楽譜が存在し、そのなかでの“制限された”即興演奏というものだった。
その、即興を加味した幾分大掛かりな作品のベース(構想)をつくりあげたとされるものが
カルロス・ロケ・アルシーナ Carlos Roque Alsina (p,electricorgan,per,flute,zurle) /ジャン・ピエール・ドゥルエ Jean-Pierre Drouet (per)/ ヴィンコ・グロボカール Vinko Globokar(tb,alphorn,zurle) / ミシェル・ポルタル Michel Portal (e-flat cl,b-flat cl,bass-cl,sax)の1966年に結成された4人編成の即興集団「NEW PHONIC ART」での経験であったそうだ。こちらは、全く正真正銘の即興演奏グループ。
≪何らかの指示をあたえる者、つまり作曲者とかリーダーとか、がいない。従って楽譜や記号や言葉などによる指定がない。さらに、メンバー相互による事前の話し合い、打ち合わせもないし、リハーサルも行われない。メンバー相互間の意思疎通は、彼らが作り出す音、各瞬間毎に行われる。≫と、ま、云われるまでもないことだろうけれど。
そして≪メンバーの一人、グロボカールの言葉を借りるならば、グループ設立以来、「いかにして演奏者間の反応が作り出されるか、いかに多くの種類の音楽的コミュニケーションが存在するか、いかにして新しい楽器使用上の、また音響的な発見がなされるか、いかに時間に対する感覚がその都度異なるものか、さらにいかに各演奏者は助力を必要とし、助力をあたえうるものか」が明らかにされたという。≫(解説・松平頼暁
こうした即興演奏の経験の積み重ねの結実が先の『ヴィンコ・グロボカールの音楽』(1973)だそうである。
それはともかくとして、この4人の腕達者ヴィルトーゾが作り上げたインプロヴィゼーションの≪直感的な緊張感≫たるや見事なもので、その≪有機的に生まれる反応の連鎖≫が作り出す圧倒的な音響空間には魅せられることだろう。
解釈など一切不要なのだ。ひたすら緊張のうちに繰り広げられる音響空間に身を浸し聴けばいいのだ。たまらなくスリリングな体験に時を忘れることだろう。そう、このスリリングの有りや無しやなのだ。なんと音とは表情豊かなのだろう。
明瞭なメロディや、リズムなどあるわけではない。なのに、斯くまで聴く者を魅きつける音響を紡ぎだせるとは・・・。そのとき限りの一回性の即興演奏をレコードで聴くことは愚かしいことなのだろうか。いやそうではなかろう。
≪直感的な緊張感≫と≪有機的に生まれる反応の連鎖≫が作り出したその音の煌めきは、刹那の永遠性の体験として十二分に味わうに価値あることと私には思える。とにもかくにも最後まで緊張感を保ちつつ聴き通してしまうことだろう。



「NEW PHONIC ART」音源サイト――
http://modisti.com/system/new-phonic-art-vt6364.html
http://beemp3.com/download.php?file=1092135&song=Improvisation+nr+2 New Phonic Art 1973 - Improvisation nr 2: Free MP3 Download