yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

シュトックハウゼン『7つの日より』(1969)。ことばの指示による“直感音楽”。コレクティヴな即興演奏に制度姓を突き破る光明を見る。だが不思議?なことにシュトックハウゼンの音に満ちているのだ。

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Stockhausen: "Aus den sieben Tagen" 1/3

            

イメージ 1ぎっしりと?予備のデータの詰まったUSBメモリーが手元になく、さてどうしたものかと・・・。選択肢がまったくなくなってしまったのだ。と云う事でいきあたりばったり(いつもそうだけれど)きょうは、ここ最近先鋭なヴィンコ・グロヴォカールの率いる即興演奏グループを取り上げてきたので、その流れに乗って、御大シュトックハウゼンの、“直感音楽”と称するコンセプトによる即興演奏のドキュメント音源『シュトックハウゼン・7つの日より(aus den sieben tagen)』(1969)を取り上げよう。これは伝統的な楽譜や図形楽譜、また個々の奏者が制度として持つ範型、様式観、枠組みに依拠する従来の即興演奏のあり方を突き抜ける音楽の方法を試みたものとして、音楽史上記憶されなければならないと思われる。“直感音楽”?そう、アンサンブルによるコレクティブ・インプロヴィゼーションを導いてゆくのは、抽象的なことばによる指示のみということなのだ。≪たとえば『太陽に向かって帆を上げよ』は、「音を一つ弾け」ということばで始まり、以下、その音を1つ1つの振動がきこえるまで長く保持し、他の演奏者たちの奏する音を別々ではなくすべて同時にきき、ゆっくりと自分の奏する音を動かして、すべての音が、完全な調和に達して金となって輝く状態を創り出せ、ということが述べられている。また、『結合』は、「おまえの身体のリズムで振動を一つ弾け」にはじまり、これに続いて、同じように奏者の心臓の・呼吸の・思考の・直感の・啓示の、そうして宇宙のリズムで振動を1つ演奏すること、さらに、この振動を任意に混ぜ合わせ、その間には充分に休止をとるよう・・・≫といった具合だ。こうしたことばによる指示のもとに集合的即興演奏がなされるということなのだ。≪つまり、この作品でのシュトックハウゼンの意図は、こうした文章を示すことによってアンサンブルを形成する演奏者たちに、ある種の統一的な精神状態と方向づけを行い、あとは演奏者たちの相互反応に基ずく即興演奏によって音楽を生成させよう≫(解説より)というものだ。ここにはポストウェーベルン、トータル・セリエールのなりふりかまわぬ絶望的闘いともいうべき試みがなされているというべきなのだろう。作曲ではなく、もはや演奏者の演奏行為、それも制度姓を突き破る直感性に光明を見出すところまで来たしまったという暗澹を思うべきなのだろうか。しかしその直感のうちに放たれる各々のヴィルトーゾによるコレクティヴなインプロヴィゼーションの煌めきはすばらしく、そしてスリリングだ。だが不思議?なことに何のテープ編集もおこなわれていないのにシュトックハウゼンの音に満ちているのだ。


収録曲――
1. Aus Den Sieben Tagen: Fais Voile Vers Le Soleil『太陽に向かって帆を上げよ』
2. Aus Den Sieben Tagen: Liaison 『結合』

Herald boje (electronium)
Alfred alings (tam-tam)
Rolf gehlhaar (tam-tam)
Alloys kontarsky (piano)
Jean francois jenny Clarke (contrebasse)
Johannes-g Fritsch (alto)
Michel portal (clarinette)
Jean-pierre drouet (percussion)