yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

吉松隆『忘れっぽい天使』(1999)。愛らしく親しみやすく、哀愁と悲哀、ノスタルジックな想起呼び起こすメロディーにあふれる作品集。何処かで聴いたような・・・。

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Takashi Yoshimatsu - Symphony no. 2 (4/4)

           
           投稿音源のものではありません。

    ハーモニカがほしかったんだよ
    どうしてかどうしてもほしかったんだ
    ハーモニカがほしかったんだよ
    でもハーモニカなんて売ってなかったんだ
    戦争に負けたんだ
    カボチャばかり食ってたんだ

        (谷川俊太郎/ハーモニカブルース )

終戦直後焼け跡に放り出された少年時代を振りかえり想いつつ、おじさんは、いや、はや、おじいさんはハーモニカを手に唄うのだった。
ご存知の方もおられることだろう。そうです、ちょっとスケベで話芸、俳句、随筆等文才にも長け、そのじつ粘着質で庶民芸を求め、芸の根源そのよってきたる生のエネルギーを追っての地道な業績称えられるべき、生真面目な学究肌をももつ異色の俳優小沢 昭一(おざわ しょういち、1929 - )の持ち歌です。
少年といっても当時≪海軍兵学校第78期生として1945年に入校≫(WIKI)(この小沢少年は軍国少年だったのだ。)とあるように、16才とは今の学制で云えば高校生であったのだが。
以前何の番組だったか記憶にないけれどテレビで見かけたそのハーモニカは演奏される曲もさりながら、その楽器のもつノスタルジックな哀愁感じさせる音色と相まって、哀しくシミジミを呼び起こすものだった。
いや、このハーモニカの小沢昭一イメージ 2は話しのきっかけで、本題はメロディーメーカーの現代音楽作曲家、吉松隆のハーモニカ作品をまとめて出されたCDだった。
いつものとおりの図書館ネット借受のものだけれどタイトルは『忘れっぽい天使』(1999)。何かな?と思っていたらCDカバーに使われている画家、パウル・クレー(Paul Klee、1879 - 1940)の簡素極まる線書きで有名な作品「忘れっぽい天使」のタイトルから来るもののよし。作曲家の好む画でもあるとのこと。
ま、このカバー画のもつ雰囲気がピッタシとも言える、愛らしく親しみやすく、哀愁と悲哀、ノスタルジックな想起呼び起こすメロディーにあふれる作品集といえる。そのノスタルジアをハーモニカというマイナー楽器が一層つのらせるのだ。
ミニマル音楽の巨人の一人フィリップ・グラスの音楽はどのような映画・劇などの伴奏音楽にも合うということで人気があるそうだが、この作品集の「四つの小さな夢の歌」は実際にも≪ラジオ番組や小さな舞台作品のために書いたメロディーを集めたもの≫(解説より)だけれど、指摘されるまでもなく、一聴そうした印象抱かせる作品だ。アア、ラジオドラマや、テレビドラマのワンシーンのバックに(悲しいことばかりじゃないさ。ホラ、元気を出しなよ、明日があるさ・・・)こういったのが鳴ってるよなーといったことばが口をついて出てくることだろう。
ノスタルジックで類型的なパターン、親しみやすく聴きやすい音型への嗅覚鋭く、メロディーを作りあげる才覚は、やはりこの作曲家の人気を支えているようだ。スリリングな冒険の旅ではなく、心地よい居場所を求めてのノスタルジックな音楽の旅と括って擱こう。何処かで聴いたような・・・。


収録作品――
1. 忘れっぽい天使1op.6
2. 忘れっぽい天使2op.8
3. 忘れっぽい天使3op.24
4. 線形のロマンスop.28b-3
5. 融けゆく夢op.30a
6. 夢色モビールop.58
7. 四つの小さな夢の歌
8. 優しき玩具~リムセ
9. 同~ベルベット・ワルツ