yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

ミカエル・レヴィナスとトーマス・ケスラーの作品集(1978)。とりわけレヴィナスは野生と非理性渦巻く中世的荒々しさを髣髴とさせる力強くノイジーでバイタルな音響は魅力。

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Michaël Lévinas: "Appels" pour 11 instrumentistes (1974)

            

ミカエル・レヴィナス                          トーマス・ケスラー
イメージ 2 イメージ 3フランス電子音楽のメッカINA-GRM、( L'Institut national de l’audiovisuel - Le Groupe recherches musicales.)ピエール・シェフェールが設立した研究所(フランス国立音響映像研究所)で制作された音源のレコード化されたものが、今日取り上げるレコードだ。
ただもうひとつの電子音楽の研究機関IRCAM(イルカム)、それは≪ピエール・ブーレーズが初代総裁に就任した。音響技術の研究をはじめ、フランスの現代音楽シーンに絶大な影響を与えている。作曲家、特に若手に対し研究員制度を設けて学習研究の機会を提供しており、初期よりここで研鑽を積んだ作曲家は数多く、中でもスペクトル楽派と呼ばれる共通の作風を持つ一派は、フランスの現代音楽の主要な潮流を占めるほどの影響力を持っている。≫(WIKI)とあるけれど、双方の研究機関の人的交流の内実などはよくわからない。
ま、そんなことはともかく本題。
針降ろすや否や強烈な音響が流れ込んでくる。野生と非理性渦巻く中世的荒々しさを髣髴とさせる力強くバイタルな音響でのっけから押しまくるのを耳にし、身がのけぞる思いがするのだった。まこと野生的響きに満ちて興味深い音楽といえる。
かつて切り捨てられてきたノイズ(邦楽器でいうところのサワリなど)を楽音に取り込もうとする音響志向は、日本人にとってはなじみのあることだろうが、そうしたことの着目がいっそう面白い音色空間を作り出しているのだ。別にジャポネスクと云うつもりもないけれど・・・。
ところで、このレコードでカップリングされた作曲家の一人、ミカエル・レヴィナスMichaël Levinas,1949 - )は≪著名な倫理学エマニュエル・レヴィナスの息子。1949年パリに生まれる。作曲をパリ音楽院でオリヴィエ・メシアンに学ぶ。ジェラール・グリゼートリスタン・ミュライユ等と共に演奏団体アンサンブル・イティネレールを設立しその責任者を務め、スペクトル音楽の方向性の確立に関与した。≫(WIKI)とあり、
つまりは≪音響現象を音波として捉え、その倍音をスペクトル解析したり理論的に倍音を合成することによる作曲の方法論をとる作曲家の一群≫(WIKI)というように、そうした音響の探求開発、創作の志向性を持つスペクトル楽派の主要メンバーで重要人物あるとのことは今日はじめって知った。
しかし、先の二人とはだいぶ関心のありどころが違うように私は思ったのだが。人間のもつ生々しさ、そうした自然性への深い関与、興味関心はこの作曲家の特徴といえるのではなかろうか。こうした音響の初発の未分化なありようへの特異なこだわりはひじょうに生々しく、ノイジーでかつエネルギッシュで面白く印象を深くしたのだった。それゆえか響きに強い具体性すら感じるのだ。
それと、もうひとりのトーマス・ケスラー (Thomas Kessler 1937-)。なんでも、70年代を席巻したドイツのプログレッシブ・ロックグループ、タンジェリン・ドリームへの影響をもたらした作曲家のよし。
こうしたことも今回ネットを覗いていて初めて知ったのだが。こちらはミカエル・レヴィナスほどのインパクトはなかったけれどメリハリのある電子音でつくられている。
それにしても電子変調がつくり出す響きのなんと豊麗多彩なことか。かつて聴いたことのないような世界を現出、提示して見せるのだ。これだから現代音楽、とりわけこうした電子(変調)音楽のつくり出すスリリングで多彩な音色音響世界の面白さを知ると病みつきになるのだ。このスリル・体験、出会いが現代音楽の魅力なのだ。英語との併訳(対訳)ではなく、フランス語のみのライナーノーツなので、大まかなこともわからずあやふやなまま閉じなくてならないのは残念だけれど、きょうは思う存分堪能したアルバムと言い募ってこの稿擱えよう。


1978

Notes:
Works performed by L'Itinéraire Orchestra, conducted by Charles Bruck, Michael Levinas, Thomas Kessler.
Levinas' works here are electro-acoustic compositions. He uses filtered microphones and an idiosynchratic mixing of the amplified orchestra in order to transform their sound live (transformation en direct) into a research of the deep and hidden characteristics of the acoustic instruments.
Kessler wrote his works for acoustic and electronic instrument. It is up to the musician to decide how he is going to balance the two. In every piece there is an equal mix of electronic and acoustic instruments, who have to confront each other.


Tracklisting:
A1 Michaël Levinas Appels (7:35)
A2 Michaël Levinas Froissements d' Ailes (2:49)
A3 Michaël Levinas Arsis et Thésis ou la Chanson du Souffle (6:50)
A4 Michaël Levinas Voix Dans un Vaisseau d' Airain, Chants en Escalier (8:04)
B1 Thomas Kessler Lost Paradise (12:55)
B2 Thomas Kessler Violin Control (11:26)




Michaël Lévinas: Par-delà (1/2)