yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

ベルント・アロイス・ツィンマーマン『兵士たち・Die Soldaten(4幕からなるオペラ)』(1965)。現代音楽を特徴づける特殊奏法の極端な多用などはなされておらず、比較的聴きやすいといえるが・・

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B.A. Zimmerman : Die Soldaten

            

イメージ 3細切れに聴き、やっとLP3枚で総時間およそ2時間の作品、それもオペラ作品を聴き終えました。あらすじをネットで仕入れてはいるものの、総合芸術といってもいいのだろうオペラを音だけの鑑賞ですますにはいささか無理があるのだろうか。現代オペラの傑作として喧伝されているそうだけれど全般的な印象として感じ入るというほどではなかった。やはり視覚要素の欠落は致命的と言うほかないのだろうか。字幕スーパーつきのDVDでの鑑賞であればその印象は大きく変わっていただろうけれど。先日来しばしばブログ登場となっているベルント・アロイス・ツィンマーマン( Bernd Alois Zimmermann、1918 - 1970)のオペラ『兵士たち(4幕からなるオペラ)』(Die Soldaten)が今日取り上げる作品だ。この現代オペラのことどもは、ネットでの商品解説で尽きると思われるので、ここに引用させていただこう。≪ベルント・アロイス・ツィンマーマン『兵士たち』(Die Soldaten)はベルント・アロイス・ツィンマーマンのオペラ。ベルント・アロイス・ツィンマーマン[1918-1970]はドイツの作曲家。彼の作風の特徴の一つが、引用の技法を用いているということ。バロックからロマン派、さらに民俗音楽、ジャズなど様々なジャンルの音楽のエッセンスが隠し画のように取り入れられています。この引用の技法は、このオペラでも用いられています。さらにこの『多元主義』は、視覚的にもこのオペラに現われます。たとえば第2幕の終りでは、舞台上に3つの段が用意され、3つの場面が同時進行します。初演にあたり、この作品はあまりにも難しく演奏不可能であるとサヴァリッシュやヴァントに言われて、初演時期がなかなか決まらなかったなど、数々の困難を伴いました。最終的に、若き日のギーレンに棒が託されましたが、そのリハーサルは壮絶でした・・・。ソリスイメージ 2ト歌手たちの練習は実に370回、声楽アンサンブルの練習が100回、さらにステージでの立ち稽古も60回以上。さらに、オーケストラ稽古が25回、全曲の通し稽古も実に10回(うち7回はピアノでなくオーケストラとの練習)。この作品の上演に対する当時の劇場関係者および演奏者たちの使命感がいかに強かったか、ということを感じさせられます。初演はチケットも早々に売り切れる大好評、一部否定的な見方をする批評家たちもいましたが、大絶賛で終わりました。
 この、厳しい初演を実現したメンバーたちによる演奏の録音が、このCDです。普通に聴いていても『演奏するのはたしかに難しいだろう』と感じられるこの作品ですが、劇的で、うねるような圧倒的迫力。人間誰もが心の奥底に持っている、ドロドロした部分が冒頭から炸裂しています。
 2008年5月には、新国立劇場若杉弘の指揮で公演が予定されており、2008年最大の話題オペラとなること間違いなしといえるでしょう。
 あらすじは、小間物商人の娘マリーが、婚約者がいながら兵士たちと逢瀬を重ね、道を踏み外し、乞食、娼婦へと身を窶していくというもの。ドロドロの人間ドラマが繰り広げられています。なお、題名を『軍人たち』とする表記もありますが、ここではニューグローヴ音楽辞典に倣って『兵士たち』と致します。(キングインターナショナル)≫と云ったぐあいだ。私はベルクのオペラを未だ通しで聴いたこともないけれど、シェーンベルクの未完のオペラ『モーゼとアロン(Moses und Aron)』はブログ記事としてすでに投稿した。こうして二つの作品を並べると、逐一の歌詞内容や視覚要素などを抜きにした、純然たる<音>楽としての凄さは圧倒的にシェーンベルクだ。それは理念、イデオロギーがいまだ価値として微かにでも信ぜられていた時代のしからしむところでもあるのだろう。音楽のみの純然とした鑑賞として耐え得る価値世界にあったということなのだろうか。しかしそうした価値崩壊による、音楽的には多元主義、多様式主義を迎える戦後の時代となると、音楽的に混沌の極みといってもいい様相を呈する。物語ることの困難。すべての芸術様式でもそうなのだろう。この作品では、現代音楽を特徴づける特殊奏法の極端な多用などはなされておらず、比較的聴きやすいといえる。その意味では視覚抜きの純然とした音楽としての鑑賞もできはするが・・・。じっさいの舞台でのオペラでもたぶんそうだと思うけれど、最終4幕クライマックス、レコードでは6面にあたる箇所は感動ものであった。会場イメージ 4に設置してあるスピーカーから放たれるルイジ・ノーノ的テープ音楽・効果音と情念の放吟・シュプレッヒシュティンメ、それにジャズなども飛び出してくる多元的で、かつ切迫した表現主義的なオーケストレーションなどとの相乗もあってひじょうにドラマチックのうちに終わるのだった。