yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

ジェルジ・リゲティ『鍵盤楽器のための作品集』(1997)50才代絶頂期にあたるまでの本CD収録作品は、清新さと斬新で、しかも調性手放さずバランスが取れていて聴きやすい。しかし極めつけは「ヴォルーミナ」

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Ligeti: Volumina (1)

              

ハンガリーナチス・ドイツの同胞として1941年に参戦した(このときの欺瞞に満ちた政治家たちの動向を、私は許すことができないだろう)。しかしながら、国のなかはまだ平穏で、戦争の気配はなかった。(たまにブダペストが空襲され、私もそれを経験したものの)。それにもかかわらず、ほとんどの若者はウクライナ戦線に駆り出され、その多くは二度と帰ってこなかったのである。1944年まで、私自身は戦争に<係わらなかった>が、いざ係わり合ってみると、それは完膚なきまでに私を打ちのめした。<ユダヤ人強制労働者>として、私はハンガリー軍に招集されたのである。両親と兄、親戚の多くはアウシュビッツに送還された。生き残ったのは母親だけであった。戦争の恐怖が国中を席巻し、それ以後の人生はまったく変わってしまった。≫(ジェルジ・リゲティ・自作解説より長木誠司訳

イメージ 2きょうも、ネット検索で中央図書館より借り受けたCD。身銭切らずの鑑賞ということで、気がひけるのだけれど、「金はない、時間はある」(テレビCMのコピー)とまではまだいかない、というより「金はない、時間もない」という貧乏暮らしには、ありがたい公共サービスなので、利用させて頂いている。と、前振りはそのぐらいにして本題。今回借り受けたCDはジェルジ・リゲティ(ジェルジ・シャーンドル・リゲティ György Sándor Ligeti, 1923 トゥルナヴェニ - 2006 ウィーンは、ルーマニア出身のユダヤハンガリー人作曲家。)(WIKI)の『鍵盤楽器のための作品集』(1997)。初期(19才)の習作から78年脂の乗り切った時期の作品までがこのCDには収められている。作風でいえば、戦後トータルセリエールの礎となったウェーベルンや、シェーンベルクの12音列、無調でさえも国の政治体制のために閉ざされていたということもあってか、新古典的な、ストラヴィンスキーを思い起こさせるような作品が世界初録音として聴くことができた。確固とした完成度をもつ初期作品を聴くにつけ、そうしたことは俄かに信じがたいけれど・・・。しかし傑作が集中したリゲティ絶頂期までの鍵盤作品をこうして通しで聴いてみると、新しい音色、響きへの探求姿勢が貫かれているのに、案外に、調性の響きがそのなかにも保たれていることに気づかされた。現代音楽作曲家のなかでも比較的人気?があり、オーソドックスなクラシックファンにも受け入れられている理由がこんなところにあるのだろうと想像された。そうした意味で聴きやすい作品群といえるだろうか。本CD収録の50才代の絶頂期にあたるまでの作品は、清新さと斬新で、しかもバランスが取れていて聴きやすくおもしろい。とはいうものの、やはりここでの圧巻は、トーンクラスター手法の響きの斬新で、一躍世に知られることとなったパイプオルガン独奏の「ヴォルーミナVOLUMINA」(1961-62)だろうか。この作品を最初に聴いたときの驚きはいまだに忘れられない。今回あらためて聴いてその凄さに感じ入ったのだった。マウリシオ・カーゲルの作品と双璧をなす現代オルガン独奏の傑作といえようか。ドシロウトの私が言うまでもなく、間違いなく音楽史に残る傑作といえよう。本CD収録の鍵盤作品のほとんどは、私も初めて聴くものだったが堪能できた。しかしなんといっても極めつけはパイプオルガン独奏の「ヴォルーミナVOLUMINA」であったことを再度言い募ってこの稿擱えよう。革新の時代を告げ知らせ、天界地界を揺さぶり震わす壮大なクラスター音(塊)の登場だった。何という作品だろう!。



収録作品(※世界初録音)――

1. ※行進曲Indulo - March – Allegro(1942)
2. ※多声的練習曲 Polyphonic Etude - Allegro comodo (1943)
3. ※3つの婚礼の踊りThree Wedding Dances: The Cart Is At The Gate - Allegro (1950)
4. ※3つの婚礼の踊りThree Wedding Dances: Quickly Come Here Pretty - Andantino
5. ※3つの婚礼の踊りThree Wedding Dances: Circling Dance - Allegro
6. ※ソナチナSonatina: Allegro (1950)
7. ※ソナチナSonatina: Andante
8. ※ソナチナSonatina: Vivace
9. ※アレグロ Allegro (1943)
10. カプリッチョ第1番Capriccio No. 1 - Allegretto capriccioso (1947)
11. インヴェンションInvention - Risoluto (1948)
12. カプリッチョ第2番Capriccio No. 2 - Allegro robusto (1947)
13. 記念碑Monument (1976)
14. ライヒトライリーのいる自画像Selbstportrait mit Reich und Riley (und Chopin ist auch dabei) (1976)
15. 穏やかに流れるような動きでIn zart fliessender Bewegung (1976)
16.ハンガリーパッサカリア Passacaglia ungherese - Andante (1978)
17. ハンガリアン・ロックHungarian Rock - Vivacissimo molto ritmico (1978)
18. コンティヌウムContinuum - Prestissimo (1968)
19. ※リチェルカーレRicercare - Omaggio a Girolamo Frescobaldi (1951)
20. オルガンのための2つの習作・ハーモニーズTwo Studies For Organ: Harmonies - Rubato, sempre legatissimo (1967)
21. オルガンのための2つの習作・流れprestissimo,sempre legato (1969)
22.ヴォルーミナvolumina(1961-62)




GYORGY LIGETI – ATMOSPHERES(1960/1)