yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

ジョン・スティーヴンス率いるSMEの『FOR YOU TO SHARE』(1970)。フリージャズのジャポネスク。雅楽ジャズの“ヘテロ”の混沌、これはケッサクで傑作だ。スバラシイ。

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イメージ 2おもしろいレコードに再会したものだ。イギリスの先鋭な真のフリージャズの先導者、ドラマー、パーカショニストのジョン・スティーヴンス John Stevens (1940-1994)が率いる、おおよそメンバー不定な、その名の通りのフリーインプロヴァイズド・ジャズアンサンブル「Spontaneous Music Ensemble」の1970年に行なわれたライヴパフォーマンスドキュメント。レコードタイトルは『FOR YOU TO SHARE』となっており、何でもこのレコードの売り上げは核軍縮キャンペーン活動に奉げられるとの主旨で出されたとのことだ。そのコンセプトと関係があるのかどうかわからないけれど、会場の聴衆も参加しての混然一体、まさに混沌を音楽するといった、まことにおもしろいパフォーマンスとなっているのだ。それになんといっても、レコードライナーノーツに記されているけれど、ジョン・スティーヴンスは、67年頃には、Spontaneous Music Ensemble(SME)形成の土台・さきがけとなったエヴァン・パーカーとのデュオで、日本の雅楽に大きな影響をうけたパフォーマンスを記録に残しているとのことだ(73年当時未発売)。雅楽のきわめてゆっくりとした音の動き、それらと、独特のユニゾンが作り出す持続音の響、ユニゾンと言うよりは、ヘテロフォニックなその音響世界。このような奇妙で、いや、面白い音色、響きをもったジャパネスク・(雅楽)ジャズが聴けるとは。日本のアヴァンギャルドの誰一人として(寡聞にしてわたしは知らない)試みなかった雅楽(手法をとり込んだ)ジャズが、イギリスのアヴァンギャルド・フリージャズで聴けるとは・・・、一体これを喜んでいいのか、悲しんでいいのか。まことにこれはケッサクで、悪意をもっての珍妙などと決して云えるどころではない、むしろ果敢で称賛されるべき試みとわたしは評価したいくらいなのだ。お株をとられるという表現があるけれど、まさにそのとおりだ。こうした実験精神をもった数寄が遠くかの国に存在したからこそのヨーロッパ・フリージャズの画期だったのだろう。それにしても、雅楽云々抜きにしても、この混沌の、それも、聴衆を巻き込んでのこの喧騒はすばらしい。これはいったい何なのだ?この不思議な混沌のコレクティヴジャズは。ヘテロフォニックな雅楽がアフリカンのジャズとなり、巷の喧騒となり、恐山のシャーマンの世界となり、それが、すべてへテロフォニックに進行してゆくのだ。雅楽とアフリカン、巷の喧騒の大道芸のヘテロ、好き勝手が結果する奇妙な混沌、アモルファスな美。≪(ヘテロフォニーは音楽のテクスチュアの一種で、モノフォニーの複雑化したもの。つまり、同一の旋律を奏でる様々な奏者や歌手が、任意で別々に動いたり、リズムやテンポを微妙にずらしたりすることで異なった装飾や音型が生じ、偶発的に瞬間的なポリフォニーを生ずるようになったものをいう。)≫(WIKI)、なんとも奇妙な雰囲気を、だがしかし、可能性を感じさせてくれる響き、リズムで満ちているのだ。ヘテロヘテロ・・・。この混沌はまこと先見であり、可能性に満ちている。ケッサクではなく、傑作に相当する。これはすばらしい!。フリージャズ史の隠れた傑作と、今ここで声高らかに言い募ってこの稿擱えよう。



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http://www.emanemdisc.com/E4023.html SPONTANEOUS MUSIC ORCHESTRA
FOR YOU TO SHARE

JOHN STEVENS percussion, voice
TREVOR WATTS soprano saxophone, voice
plus numerous young musicians and audience members
on saxophones, guitar, double bass, percussion, voices

1 - FOR YOU TO SHARE - 37:06
- CLICK PIECE
- SUSTAINED PIECE 1
- SUSTAINED PIECE 2
- IF YOU WANT TO SEE A VISION
2 - PEACE MUSIC - 27:46Analogue recordings made in London

1 in concert at The Crypt by BOB BROWN - 1970 MAY 20
2 in a studio by GEOFF GREEN - 1970 JANUARY 23
Total time 65:111 originally issued in 1973 on A LP 001
2 previously unissued